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- ID:
- 41953
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0631
- 見出し:
- <食卓ものがたり> 曲げわっぱのおひつ(秋田県大館市)
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2018063002000007.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
すがすがしい木の香りが漂う工場(こうば)に、十二尺(約三・六メートル)もの杉の木材が何枚も立て掛けられていた。
秋田県大館市で「大館曲げわっぱ」を作る柴田慶信(よしのぶ)商店。
代表取締役で伝統工芸士の柴田昌正(よしまさ)さん(44)は「こんな長い木材を仕入れるのは、良い部分を選べるから
。
家でも建てるのかと言われます」と笑った。
曲げわっぱは、薄板を曲げて作った円筒形の容器。
ベテラン職人でやはり伝統工芸士の武田成一さん(63)は「節があったり、目が曲がっていたりする部分は、曲げると折れてしまう」と部材の切り分けに注意を払う。
その後も曲げ加工や底入れなど昔ながらの手法が続く。
昌正さんは「サイズを小さくした以
外、デザインなど伝統的なものと変わりません」と話した。
大館で曲げわっぱ作りが盛んになったのは十七世紀後半。
天然の秋田杉は寒さのため成長がゆっくりで年輪が細かく、曲げても折れにくい。
杉の白木は抗菌作用があり、ご飯の余分な水分を吸うため、昌正さんは「うちではおひつや弁当箱などは無塗装。
冷やご飯が本当においしい」と胸を張る。
長い歴史を持つ大館で、同商店の創業は比較的最近だ。
昌正さんの父慶信さん(77)が二十四歳の時、もの作りに携わりたいと独学で製作を始めた。
大きく前進したのは、一九八〇年に大館曲げわっぱが、国の伝統的工芸品に指定された頃。
慶信さんの工場が、著名な工業デザイナーやクラフトデザイ
ナーを迎えての勉強会の会場になったのだ
「新しいことを吸収しようとした父が選ばれたのでしょう」と昌正さん。
この時に習得した「ろくろ」で木を削る技術が、人気商品となるおひつを生んだ。
「お客さんに『おひつの底の隅のご飯が取れない』と言われ、隅をろくろで丸く削ったんです」。
曲げわっぱと底板を組み合わせた後、ろくろで内側を滑らかに削って
仕上げる。
手間も技術も求められる工法だ
使い手の声を直接聞く姿勢は、昌正さんにも受け継がれている。
デパートの実演販売などで客の感想や要望を聞き、親子で生み出した商品は約二百五十種類。
作り手と使い手のつながりが、伝統に新たな魅力を加え続けている。
◆買う
写真
柴田慶信商店の曲げわっぱは、大館市の本社のほか浅草店(東京都台東区)、日本橋三越本店(同中央区)で買うことができる。
おひつ(2合用)3万円=写真、小判弁当箱(容量約400ミリリットル)8000円など(税別)。
名古屋市中区の松坂屋名古屋店で開かれている「日本の職人展」では、7月3日
まで実演販売を行う。
(問)同商店=電0186(42)6123
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