v11.0
- ID:
- 40989
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0309
- 見出し:
- 豊田市の「ものづくり」「森づくり」を繋ぐウッディーラー。
市産木材ブランド化で
流通コーディネート
- 新聞名:
- HOME'S PRESS
- 元UR(アドレス):
- https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00658/
- 写真:
- -
- 記事
-
一口にディーラーと言ってもいろいろだが、クルマの街・ものづくりの街である愛知県豊田市には、この地域ならではのディーラーがある
とは言っても、カーディーラーではない。
木材のディーラー、その名も【ウッディーラー豊田】だ
約10年前のいわゆる「平成の大合併」で、岐阜県と長野県に隣接するまで市域を大きく広げた豊田市は、山間部が大幅に増え、人口42万人都市ながら市域の約7割が森林を占める「森林都市」となった。
市内の森林は6万3,000ヘクタールにも及び、その6割はスギとヒノキを主とする人工林。
これにより、200
7年には『豊田市100年の森づくり構想』を掲げて森林整備に取り組んできたという。
そんな同市が、ある大きな出来事に直面する。
甚大な被害に見舞われた2000年9月の東海豪雨だ
集中豪雨で流された倒木が、同地域の水瓶である矢作ダムを埋め尽くし、街を流れる川が決壊寸前まで増水。
それを機に山の間伐を進めたものの、間引き後の木はほとんどが捨てられた。
「豊かな自然の恵みであり、市の財産でもある木を無駄にするのはモッタイナイ!どうにか活用できないだろうか?」
そんな想いを発端として、木を「使いたい」「提供したい」を繋げようと、木材の活かし方や使い先のコーディネートを目的に活動しだしたのが【ウッディーラー豊田】だ
市街地再開発事業の一つとして、2017年11月下旬に駅直結型の再開発ビル『KiTARA(キタラ)』が開業。
豊田スタジアムに繋がる豊田市駅東側の駅前通りは、約10メートル幅の歩道に景観配慮の空間デザインがされ、市産木材も活かされている
市街地再開発事業の一つとして、2017年11月下旬に駅直結型の再開発ビル『KiTARA(キタラ)』が開業。
豊田スタジアムに繋がる豊田市駅東側の駅前通りは、約10メートル幅の歩道に景観配慮の空間デザインがされ、市産木材も活かされている
元・大工の親方が「木材コーディネーター」として奮起!
木材加工・流通・建築工事請負・製造販売を行う向井木材株式会社企画室長であり、木材コーディネーターの肩書を持つ【ウッディーラー豊田】会長・樋口真明さん/木材コーディネートを行った豊田市駅前のまちの案内所&ソフトクリーム店『エヌロク』ウッドデッキにて
木材加工・流通・建築工事請負・製造販売を行う向井木材株式会社企画室長であり、木材コーディネーターの肩書を持つ【ウッディーラー豊田】会長・樋口真明さん/木材コーディネートを行った豊田市駅前のまちの案内所&ソフトクリーム店『エヌロク』ウッドデッキにて
豊田市産木材のコーディネート活動を呼びかけたのは、【ウッディーラー豊田】会長の樋口真明さん
木材コーディネーターの肩書きを持つ樋口さんは、地元で長年続く木材商社・向井木材株式会社での勤務を経て独立。
大工の親方として13年間建築や木材にどっぷりと関わってきた。
「大工をしていた時、スウェーデンに視察に行く機会がありました
北欧では木材を大量に使うんです。
製材できる70年以上の木を1日に5,000本も
だから、木を使うスピードに、木の育つスピードが追い付いていない。
飛行機上空から見た森林もハゲていたりするんですよ!
そうして木がなくなってしまえば、また別の地でさらに木を切る、という流れです
でも、それは違うのでは?それではいけないのでは?そう思ったんですよね。
」(樋口さん)
「北欧の山を見て、日本の山を考えた」という樋口さんだが、北欧のように木を切りすぎ・使いすぎて“山から木がなくなる”ことが心配なのではなく、日本の場合は、そもそも“山の木を使っていない”ことに危険を感じたのだと話す
「育った木・切った木を“放ったらかし”にすることなく使ってもらえるように調べ考えた中で、まずは“お互いの顔が見える関係づくり”が大切、との仮説を立てました。
都市部と農村部、地域や人の繋がりを見えるようにして『木を使いたい』と『木を届けたい』を繋げながら距離を近づけていこうと。
」(樋口さん)
その熱い想いから大工を辞め、改めて木と向き合うために以前勤めていた向井木材に出戻ることにしたのが6年前。
その2年後には、人と木を繋げるべく“顔の見える流通”を進めるために、会社の同意を得て木材コーディネート活動を進めていった。
情報の壁を薄くし、一歩ずつ。
人と木をつなげるプロジェクト
豊田市産木材の流通をデザインした例には、三角スツール(写真)や、ウッドデザイン賞2016を受賞したバイクラックの製作などがある。
2016年には市内の小学校とこども園の合築を任され、原木ベースで3000m2の市産材を使用。
樋口さんは元親方の腕を活かして監督・指揮も行ったそう
豊田市産木材の流通をデザインした例には、三角スツール(写真)や、ウッドデザイン賞2016を受賞したバイクラックの製作などがある。
2016年には市内の小学校とこども園の合築を任され、原木ベースで3000m2の市産材を使用。
樋口さんは元親方の腕を活かして監督・指揮も行ったそう
人と木を繋げるべく4年前にスタートした“個人発”のこの活動だが、抱える課題に“情報の壁”があった。
「木材流通は商売特性もあって、買う側から売る側に適正な情報を伝えない気質があるように感じる」と樋口さん。
また、国産木材価格の低廉化の影響を受け、地域の林業・製材業は立ち行かなくなり、山主が自分の山に情熱を注ぎ込めないこともあり、その“情報の分断”が地域材の衰退を招いていたと話す
売り手と買い手の状況や想いが互いに分かりづらく見えづらいゆえに「どんな木を、どう使って、それが幾らでできるのか」が双方になかなか伝わらないジレンマがあったそうだ。
しかし、情熱は人を呼ぶもの
一級建築士やデザイナー、家具職人、カメラマンなどが志を共にするように集まり、各々の得意分野で知識や腕、人脈を持ち寄ることで活動が加速。
提携・協働で関わる人も増えていった
そして遂には、豊田市産木材を利用して伐採から製材・加工・設計・販売までを行って「地元の木を切る→使う→作る→提供する」までの一連を有志たちと実現することになっていく
併せて、豊田市の木と親しむワークショップやイベント、「木育(もくいく)」や森を知ることをテーマとした講演会、伐採から製材までを行う1泊2日の林業ツアーなど様々に開催しながら、地域材拡大のプロジェクトは進んだ
また“流通”では、made in TOYOTA/born in TOYOTAにこだわった
ものづくりや手作りを行う部分と、品質・コスト・安定性を担う部分の両方にブランディングが不可欠と考え、地域の職人たちが、100%豊田市産の木から作り上げるオーガニックな木材『クラフトウッド』と、近隣エリアから集めた木材をブレンドして市産材のブレンド率も開示して豊田市内で製材・加工を行う一般
建築用材『メーカーウッド』というの2つの木材をブランド化。
ブランドマネジメントや情報発信を行いながら、新たな木材流通を目指している。
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