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- ID:
- 38949
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0705
- 見出し:
- 木の風景
- 新聞名:
- ジャパンデザインネット
- 元UR(アドレス):
- https://www.japandesign.ne.jp/space/mokunofukei/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
山口県の長門市で、先代から製材業を生業としている建主が、市街地から離れた山に住みながら木材展示ギャラリーを営むことにした。
立地は駅から近く、かつて賑わっていた商店街や幹線道路沿いに並ぶ大型店舗など、地方都市の風景が広がっている
長門市の山は、赤松から椎などの広葉樹へ植生の交代があり、山から集まるさまざまな樹種が樹皮、チップ、おが屑、建材、造作材、木細工などに分類加工されていく。
その様子は、山と人の営みが時間をかけて築いた関係そのものだった。
この地で製材を生業にすることは、山の生態を理解しながら共存す
る方法を模索することでもある。
そこで木材展示ギャラリーの空間は、“地域に根ざした製材の技術や生業を再び街へ開くこと”をテーマとした
広葉樹材は曲がりやすいため、2m以下の比較的短い材が取りやすい。
また、製材工程の中で、節・変色・虫食いなどによる不適格材が出る。
工程の中で生まれる材寸を活かしながら、建築の構法としても利用できるのではないかと考えた。
短めの板材をビスと楔(くさび)を用いて縦材を挟みながら横材を組
み上げる構法で、自由な大きさの連続壁をつくることができる
建物の架構には、このような組壁と一般的な柱・梁が併用されている。
組壁によって緩やかに区切ることで、ギャラリーと住居を両立させ、周囲の街やアプローチの庭、中央のギャラリー兼LD(リビングダイニング)、奥の内庭が連続して体験できる空間になっている。
和室とその上のテラスは外と内とを繋ぎ、プラ
イベートな諸室は庭やギャラリー兼LDを立体的に囲むように配置されている
地域に根ざす製材技術とその由来を辿り、建築の位置付けを再考する。
山に近い製材所で切り出された木材を市街地で組立てることで、改めて今日的な姿で生業が垣間見える場をつくる。
その具体化を目指す取り組みが、生業と周辺の街との関係を新たに築き直し、自然と人の関係が築いてきた豊かな
営みの価値を広めることに繋がればと考えている
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