v11.0
- ID:
- 36588
- 年:
- 2016
- 月日:
- 1014
- 見出し:
- 木を「食べる」…その驚きのレシピとは?
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20161012-OYT8T50160.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
貴重な森林資源の更なる活用が求められる中、近年「木の食用化」という取り組みが進められているのをご存じだろうか。
木材を食べることが何につながるのか。
そもそも木は食べられるのか。
森林ジャーナリストの田中淳夫氏に現状を説明してもらった
“逆転の発想”
おがくずを細粒化し、精製したスーパーウッドパウダー(樽脇園提供)
おがくずを細粒化し、精製したスーパーウッドパウダー(樽脇園提供)
「木を食べる」と言われると、どんな想像をするだろうか
まさか丸太にかじりつくシーンを思い浮かべたりしないだろうが、それにしても「木」である。
いかにも木片が喉に刺さりそうで、味だって期待できない。
そもそも食べなくてもいいのではないか……
しかし木の食用化は、今、注目されている木材利用法の一つなのである。
タイトルがずばり『木を食べる』(牧野出版)という著書を出している静岡理工科大学の志村史夫教授が提案するのは、スギやヒノキの木材を粉にして、食品に混ぜる方法だ。
直径0.3ミリ程度の微細な木粉(スーパーウッドパウダー)にしたうえで、煮沸することで滅菌やあく抜きをする。
それに小麦粉などを
混ぜてパンやケーキ、ビスケットを焼いたり、うどんのような麺に加工したり。
ほかにもミンチ肉と混ぜてハンバーグやソーセージなどにすることも実験したという。
その結果は驚きだ。
ほとんどが3割程度まで木粉を混ぜても、味や舌触りなどに影響なく食べられたという。
木粉を5割にしても食べること自体に支障はなかったそうだ
このスーパーウッドパウダーは、茶葉と混ぜた「おがっティー」とネーミングされ、すでに販売されている。
志村教授と静岡県川根本町の茶農家・樽脇園がコラボして生み出した商品だ。
茶に木の香りが漂い、味に深みが増すという。
「おがっティー」は見た目も普通の緑茶と変わらない(樽脇園提供)
「おがっティー」は見た目も普通の緑茶と変わらない(樽脇園提供)
世界的に有名な料理人の一人で、『ワールド・ベスト・レストラン50』の2016年ランキングにも入った東京・南青山にあるフランス料理「NARISAWA」のオーナーシェフ・成澤由浩氏も、木を使った料理を提案している。
もともと「森とともに生きる」を料理のテーマにしていたので、木も食材にできないかと思いつい
たらしい
すでにナラやスギの削り屑くずから取った出汁だしのスープ「森のエッセンス」を発表したほか、焼きたてのパンにクリの木の粉をふりかけて蒸した「森のパン」もある。
木の香りの出方は、木を切るタイミングや季節などの条件によっても変わるという。
すでに実用化されている。
秋田県由利本荘市の郷土菓子である松皮餅(秋田県提供)
秋田県由利本荘市の郷土菓子である松皮餅(秋田県提供)
どうやら木を食べることは可能なようだ。
一部の有毒な樹液を含む木材を除いて、木材を摂取しても人体には無害なのである。
それどころか、木はすでにさまざまな形で人々の口に入っていた。
たとえばタラノキとかウドのような樹木の新芽は、山菜として食されている。
秋田県の伝統菓子である松皮餅も、アカマツの皮を練り込んだ餅だ。
シナモンやキハダのように樹皮を調味料や薬剤にすることも珍しくない
さらに言えば、木材から抽出された成分・セルロースを食品に添加することは、広く行われている。
たとえばプロセスチーズの中でも粉チーズや細切りの「とろけるチーズ」にはセルロースが添加されている。
サプリメントなどにもセルロースは使われる。
またコンニャクとセルロースによる麺などの食品もすでに市販
されている。
水分を保ち、形を整える増粘安定剤として効果的なのだ
セルロースを分解して果糖やブドウ糖などの糖類にすると、もっと利用法は膨らむ。
木材などから生成されるキシリトールの名で知られる糖類は「虫歯にならない甘味料」として人気だ
最近では、セルロースをミクロ単位まで分解したセルロースナノファイバーの研究が進んでいる。
この素材は鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強さを持ち、熱にも強い。
また透明に加工できることからさまざまな用途が模索されているが、その一つに食品添加物もある。
ここでも「木を食べる」ことにつながるのであ
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