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- ID:
- 36238
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0826
- 見出し:
- 新国立競技場設計者・隈研吾氏「スタジアムは楽器」新国立で感動奏でる
- 新聞名:
- スポーツ報知
- 元UR(アドレス):
- http://www.hochi.co.jp/topics/20160825-OHT1T50194.html
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- 【写真】
- 記事
-
2020年東京パラリンピックの開幕まで、25日であと4年となった。
東京五輪のメインスタジアムであり、パラリンピックでも開閉会式と陸上競技で使用される新国立競技場の設計を担当する建築家の隈研吾氏(62)がこのほど、スポーツ報知のインタビューに答えた。
ブラジルに足を運び、リオデジャネイロ五輪
の開会式を観戦した隈氏は「『スタジアムは楽器だ』と感じました」と話し、新たな構想が浮かんだ様子。
また、木材の有用性を強調すると同時に、今春話題となった聖火台問題にも触れた。
(高柳 哲人)
今月5日(日本時間6日)のリオ五輪開会式。
隈氏はマラカナン競技場のスタンドからフィールドを眺めていた。
現地2泊という強行軍だったが、どうしても生で開会式を見ておきたかったという。
「エンジョイするというわけにもいかない。
胃が痛くなる感じはありましたね(笑い)」。
ただ、現地に行っただけの“収穫”は
あったという。
マラカナン競技場は、半世紀以上前の建物。
それを改修して使用している。
「スピーカーに問題がありました。
大型ビジョンを見たくても、私の座席からは後付けのスピーカーが邪魔してよく見えず、イライラ。
音のクオリティーも良くなくて、クラブの中に放り込まれたようでした」
年末から工事に着工する新国立の新たな課題も見つかった。
「リオで感じたのは『スタジアムは楽器だ』ということ。
ギターの胴の部分と同じで、音を反響させるものなんです。
音を出す“主役”は選手と観客。
その意味で、木を使うことは『正解』だと思いました」
隈氏は、建築物に木材を取り入れることで知られる。
新国立も、建物外側のひさし部分は木材を用いて法隆寺五重塔など日本の伝統建築の「垂木(たるき)」を想起させるほか、スタンドを覆う大屋根にも集成材を使用。
「木は電子音ではない、アコースティックな音を作る。
観客は選手の躍動を目と耳で受け
取って感動できると思います」。
自らのコンセプトが間違っていないとの確信を深めた。
木材の利用は費用増大につながるとの指摘も否定する。
「使用する10・5センチ角の角材は、家屋の建築で使用される最も一般的なもの。
流通量が多く価格が安い。
また、メンテナンスの点でもコンクリートの場合はひびが入ると周辺まで全て補修が必要な一方、木材なら傷んだ部分だけ取り換えればいい
」
リオ五輪では開閉会式ともに大量の花火が打ち上げられた。
日本は花火の“本場”だが、「木の屋根」に影響はないのか。
「人が多く集まる場所で生の火を使用する際には、その建物が木だろうがコンクリートだろうが、さまざまな制限がある。
それをケース・バイ・ケースで確認し、許可を取って使用する形に
なります」。
屋根が木だから演出に制限が出るというのは「言葉が適切ではない」とした。
今年3月には「設計に聖火台が想定されていない」と話題になった。
「過去の五輪を見ても、聖火は演出家に委ねられている。
その意味では『聖火台がない』と議論になっているのには驚きました。
演出家が決まる時には、まだ観客席の椅子などは設置されていませんし、演出に差し支えのないようにする微調
整はいくらでもできる。
心配は全くいりません」。
リオ五輪も聖火台は可動式で、大会期間中は会場の外に置かれていた。
誰が務めるかが注目される演出家は「大会の1年半ほど前に決まる」と聞かされているという。
◆新国立競技場 1964年の東京五輪開催時に建設された国立競技場の跡地に造られる競技場。
2012年のデザインコンペで英建築家ザハ・ハディド氏の案が採用されたが、費用増大などを理由に15年7月に白紙撤回。
再度のコンペにより同年12月、隈氏と大成建設、梓設計のチームの案が選ば
れた。
6万8000人収容で総工費は1490億円。
19年11月末に完成予定
◆隈 研吾(くま・けんご)1954年8月8日、神奈川県横浜市生まれ。
62歳。
79年に東大大学院工学部建築学科を修了後、87年に空間研究所、90年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。
09年から東大教授。
主な受賞歴は01年村野藤吾賞、10年毎日芸術賞、11年芸術選奨文部科学大臣賞
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