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- ID:
- 35588
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0603
- 見出し:
- 4月に校舎焼失 青根小・木材で復活の楽器
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/news/20160602-OYTNT50248.html
- 写真:
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- 記事
-
4月の火災により県内最古で唯一の現役木造校舎を焼失した相模原市立青根小学校(緑区)で、校舎に使われていた木材を吹奏楽器のコカリナとして再生させるプロジェクトが始動した。
コカリナ奏者の国内第一人者黒坂黒太郎さん(66)らが今秋、全児童4人と「復活のコカリナ」の優しい音色を響かせる計
画だ。
2日には、黒坂さんらが、青根小が間借りしている市立青根中の教室を訪れ、4人に特別授業を行った。
(矢牧久明)
木製笛のコカリナはもともと、東欧ハンガリーの民族楽器。
津波や火災などの被災木からも作ることができ、黒坂さんは、東日本大震災や関東・東北豪雨などの被災木をコカリナとしてよみがえらせ、地域の人たちに贈ってきた。
黒坂さんはこの日、初対面した児童たちに、原爆で焼かれた広島市のエノキや、津波被害を受けた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」で作ったコカリナを披露。
「これは復活の楽器です」と語りかけ、「アメイジング・グレイス」や「海原」などを演奏、妻で歌手の矢口周美さんが歌った。
「秋には、あの校舎の木で作ったコカリナでみんなで演奏しようね」と言って授業を終えると、児童たちは笑顔で返礼した。
火災後に入学した一人だけの1年生の女子児童は、コカリナに触れながら、「とってもきれいな音が出るので、私も吹けるようになりたいです」と、しっかりした口調で話した。
プロジェクトを企画したのは、黒坂さんに師事する横浜、相模原市などの愛好家でつくる「青根小学校コカリナ応援団」。
団長の主婦林朋子さん(59)(横浜市緑区)は火災後、青根小卒業生の知人女性(73)が悲しむ姿に胸を痛めた。
女性の父親は、校舎建築を指揮した大工の棟梁とうりょうだったという。
林さんが今回のプロジェクト提案を手紙にしたため、黒坂さんに送ったところ、ちょうど同じことを考えていたという黒坂さんが「ぜひやりましょう」と応じた。
特別授業の後、黒坂さんらは焼け跡の青根小を訪問。
校庭隅に集められた廃材を“触診”し、コカリナの材料にできそうな木材を選別した。
戦時中の1943年、地域の人たちが地元で最も良質なヒノキを切り出して建てたという校舎。
その木材だけに、黒坂さんは「表面は黒焦げだが、想像していた通り中身
はしっかりしている。
きっといい楽器に仕上がる」と話した。
製作費用はカンパを募り、児童と教職員、地域住民らのために30~50個を専門職人に近く注文。
7月中旬をめどに青根小に贈呈し、秋には児童たちと校舎跡地で演奏会を開く
曲目の一つはすでに決まっている。
黒坂さんが、神奈川の水源地・青根の美しい緑に魅了され、着想を得て作曲した「青のワルツ」だ。
「コカリナの音で青根の人たちを勇気づけたい」と、応援団メンバーは願っている
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