v11.0
- ID:
- 35415
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0508
- 見出し:
- 森林ノミクス/木材産業で地域の活性化を
- 新聞名:
- 河北新報
- 元UR(アドレス):
- http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160509_01.html
- 写真:
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- 記事
-
新緑の季節を迎え、生まれ育った国が森林王国であることにあらためて気付く。
だが、山に入れば、間伐どころか、時として主伐さえもが行われず、荒廃が進む森林の姿が目に入ってくる
そんな危機的な状況を踏まえ、3月下旬、18道県の知事らが国に対して、日本の森を再生させるための政策を提言した
豊かな資源を生かし、地域に密着した林業と関連産業を育てて雇用創出につなげていく。
その目標に異論はない。
肝心なのは、いかに具体的なアクションを積み重ねていくかだ
提言を行った18道県はいずれも森林資源が豊富な地域だ。
東北からは青森と山形の両県が加わった
特に山形県は2013年、知事と県内35全市町村長が「やまがた里山サミット」を設立。
森林資源を経済成長に結びつけるため、独自に「森林(もり)ノミクス」宣言を出し、林業再生を通じて地域経済の活性化に取り組む姿勢を明確にした
今回の提言活動でも山形は大きな役割を果たしており、引き続き、率先して連携の輪を広げていってほしい
森林整備という「川上」から、流通網の整備、産業育成といった「川中」、そして利用拡大策や人材育成などの「川下」までを視野に入れた、包括的な対策が求められると言っていい
従来の林業は「保全」に主眼を置く「育てる林業」が主体だった。
これから求められるのはむしろ「使う林業」への転換である。
需要の開拓こそが第一に考えるべきテーマだ
森林はエネルギー資源でもある。
暖房用の木質チップやペレットの利用拡大、木質バイオマス発電の普及は、需要の掘り起こしにつながる
公共建築物に地域の木材を積極的に活用することも欠かせない。
山形県内では、南陽市が15年、地元の杉材などを使って、地上3階、地下1階の文化会館を建設した先進的な事例がある
地元林業の振興策として注目されるだけでなく、木造コンサートホールとして世界最大とギネスの認定を受けたことで、観光にも大きな刺激となった。
林業の振興が新たな地域づくりを促した好例と言えよう
山形県は、西村山地域に生育する「西山杉」を秋田杉などに続くブランドにしようと、14年、「西山杉利活用推進コンソーシアム」を設立。
官民を挙げて売り込みに取り組んでおり、そのチャレンジも後押ししたい。
ブランドを通じた情報発信は有力な武器になる
認知度は低いが、直交集成板(CLT)の普及、生産拡大も課題だ。
CLTは繊維の方向が直角に交わるよう、何層にも互い違いに接着した集成材で、中高層の木造建築にも耐えられる建材で、住宅建築や林業の世界に大きな変革をもたらす可能性がある
森林資源の活用は、衰退する中山間地域の暮らしを豊かにすることと同義でもある。
地元資源を生かした地域活性化は、古くて新しいテーマである
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