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ID : 2159
公開日 : 2006年 11月27日
タイトル
伝統工芸 モダンに進化
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/mirai/mi_mi_06112501.htm?from=os2
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元urltop:
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写真:
 
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職人の技と、先進デザインの融合が、伝統的工芸品の可能性を広げている。
 新進気鋭の照明作家・谷俊幸さん(32)(横浜市)がインテリアメーカー社員だった1990年代後半、ランプシェードに使う素材は主にポリプロピレンだった。加工しやすいが、味気なさを感じていた。
 神戸芸術工科大学時代から「伝統工芸の技術を生かせないか」と考えていたが、独立した99年、江戸時代から続く秋田の大館曲げわっぱに可能性を見いだした。
 フルーツボウルなど型破りな作品を手がける大館市の職人栗盛俊二さん(58)をインターネットで知り、電話をしてみた。都内の百貨店で開かれた実演会に呼ばれた谷さんは、ぬくもりのある曲げわっぱの雰囲気に改 めて引き込まれた。“弟子入り”を志願すると、「教えてあげるから秋田に来なさい」。
谷俊幸さん  大館市の工房で、師匠は「曲げ」の技術を1週間、教え込んでくれた。水につけ込んだ秋田杉の板を、ゴロと呼ばれる丸太で巻く技術だ。横浜に戻って技を磨き続けた谷さんは2000年、「Wappa Shade」を発表した。
 ランプシェードの素材は熱源が近いため、パイン材では樹脂が溶け、異臭を放つ。ヒノキはにおいがきつい。ほのかな香りが漂う秋田杉と、花火や手裏剣をモチーフにした斬新なデザインとの融合は大反響を呼んだ。
栗盛さんも「曲げわっぱでなければできない作品」と絶賛する。
 全国各地や海外で個展を開いている谷さんは「一つひとつ手作業で仕上げる繊細で高度な技術は世界でも通用する。たとえ用途を変えても、作り手の気持ちを伝えられるはず」と話す。
佐藤さんが手がけた非対称形状のコーヒーカップ  800年の歴史をもつ湯沢市の「川連(かわつら)漆器」も、斬新なデザインで生まれ変わった。
 「モダンデザインの漆器を作りたい。協力してほしい」。99年、イタリア在住のインテリアデザイナー川本真人さん(42)は、旧稲川町役場に電話を入れた。引き出物でもらった川連漆器を愛用する川本さんは、木地に こだわる品質の高さを生活の中で実感してきた。
 「モダンデザイン」という言葉に大方の職人が拒絶反応を示したが、佐藤公さん(44)は手を挙げた。川連漆器は全国的な知名度が低い。「今やらないと川連がなくなる」。そんな危機感があった。
イタリアンデザインも手がける漆器職人の佐藤さん  2か月後、川本さんとイタリア人デザイナー3人から、4種類のデザイン画が送られてきた。作ったこともない非対称構造や漆を塗るには厄介な形ぞろい。佐藤さんはにやりとした。「自由勝手なデザインだからこそおも しろい」  佐藤さんが手がけた朝食プレートやコーヒーカップなどの漆器は00年4月、ミラノの見本市でデビュー。以来、04年までイタリアの見本市に出展を続けると、雑誌や専門誌で紹介され、イギリス、スペインなどから注文 が舞い込んだ。今春、カプチーノ用カップ「JAP―PUCCINO」(04年作)が米シカゴ建築デザイン美術館のグッドデザイン賞に選ばれるなど、評価はじわじわと高まっている。
 鎌倉時代に作られ始めた当時は、農民の日常用具だった川連漆器。「生活に密着した道具であることを再認識してもらえるようになった」と実感する佐藤さんは、来年はイタリア出展を再開しようと、川本さんとデザイ ンを詰めている。(秋田支局 鈴木幸大)  伝統的工芸品 1974年施行の「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づき、100年以上の歴史があり、10企業30人以上が従事していることなど5項目を条件に、経済産業相が指定する。焼物、染色、織物、 木工、漆器など、全国に207品目あり、産業振興と文化保護を目的に、技術継承や後継者育成を支援している。
職人減少の一方、海外進出も  東北6県には、津軽塗(青森)、南部鉄器(岩手)、樺(かば)細工(秋田)、雄勝硯(おがつすずり)(宮城)、天童将棋駒(山形)、会津本郷焼(福島)など21品目の伝統的工芸品がある。
 経済産業省によると、全国の伝統的工芸従事者は1979年度の29万人をピークに減少を続けており、05年度には10万人に落ち込んだ。職人の高齢化も進み、30歳未満の割合は6・4%と後継者不足も深刻だ。
 こうした中、デザインを一新させたり、海外への進出を目指したりするなど、需要拡大を図る産地も少なくない。
 同省中小企業庁が支援する06年度の「JAPANブランド育成支援事業」には、南部鉄器にフィンランドのデザインを導入しようという盛岡商工会議所、津軽塗のヨーロッパ進出を目指す弘前商工会議所などが選ばれて いる。
 イタリアの筆記具メーカーが津軽塗の万年筆開発に乗り出す動きがある一方で、黒のイメージが定着している南部鉄器に、赤、青、緑などカラフルな色を取り入れるなど、斬新なアイデアを発信する産地も増えている。
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