ID : 11670
公開日 : 2009年 5月13日
タイトル
暮らす『誇り』受け継いで 筑波大大学院教授 加藤衛拡さん
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新聞名
東京新聞
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元URL.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20090513/CK2009051302000092.html
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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-中山間地域の過疎化はなぜ急激に進んだのか
歴史的に見ると、明治時代末から大正時代にかけ、畑作地帯で人口が急増した。特に中山間地域では畑作に養蚕と林業が加わる革命的な変化が起き、地域資源を循環的に有効利用する複合経営の仕組みが生まれた
。だが、この仕組みは高度成長期に一気に解体され、膨れ上がった人口を養いきれなくなった。バブル崩壊のようなインパクトがあった。
-地域資源を有効利用する仕組みが解体された原因は
高度成長期の農政・林政が、工業と同じ発想で効率化を追ったからだ。鉄道の枕木や住宅建設に木材が必要になり、成長が早いスギをありとあらゆる場所に植えた。切るだけ切って、それでも供給が追いつかなくなる
と、あっさりと外材の輸入を解禁。一気に木材価格が下がり、それ以降、値段はほとんど変わらない。効率重視の路線は小泉構造改革で徹底的に進んだ。長期的な視野で経営してきた国有林まで独立行政法人化が検討
されている。政府のお荷物となった人工林が、捨てられようとしている。
-常陸大宮市の諸沢、北富田では、先祖から引き継いだ山林や畑を、次の世代が好きに処分していいと考える人が多い
あきらめだろう。農家の調査で、一九七〇年ごろから当主が古文書の存在を知らなくなっている。過去から受け継がれた技や知恵が価値のないものとされたことの象徴だ。効率重視は地域を絶望に追いやった。
-地域で暮らし続けるため、企業誘致を求める声もあるが
高齢化や孤独死が問題になっている大都市近郊のニュータウンを見れば分かるように、便利で勤め先があるだけでは生き残れない。そこで暮らす「誇り」が受け継がれるかがカギだ。多くの近代農民が持っていた俳句
の趣味、お祭りで芸能を伝える文化的な営みなど、精神的な豊かさが誇りにつながる。
-Iターンで暮らし始める人もいる
農家でも商家でも武家でも、血縁ではなく、経営体を残すことを重視するのが日本の伝統的な考え方。(血縁がなくても)慣習や作法にのっとる人は受け入れた。現代はなおさら、そういうやり方を復活させなければなら
ない。ただ、農林業を志す人は増えていても、受け入れる仕組みがないのが問題だ。
-どんな政策が有効か
長期的な視点で森林資源の維持管理から利用までを含めて、安定雇用をもたらす公的な組織や組合をつくる政策的バックアップが必要だ。複合経営を一軒で続けるのは難しいが、地域内での分業的な取り組みはあり
得る。実現すれば、地域の人口減に歯止めがかかるだろう。ただ、農家から技と知恵を受け継ぐ時間はあまり残されていない。消費者に対して、国産のものを使って国土を守るという教育も重要だ。 =おわり
(この企画は原田拓哉、小沢伸介、高橋治子が担当しました)
かとう・もりひろ 1955年生まれ。85年、筑波大大学院農学研究科農林学博士課程修了。同大助手、助教授を経て2007年から現職。農学博士。専門は農村社会・農史学。日本農業史学会理事。林業経済学会評議委員
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