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ID : 105
公開日 : 2006年 10月10日
タイトル
「百年家具」に込められる人の想い。 横浜洋家具の伝統を守る
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新聞名
ヨコハマ経済新聞
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元URL.
http://www.hamakei.com/special/131/
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元urltop:
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写真:
 
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手間を減らす。コストを削る。商品の消費サイクルを早くして儲ける――そんな現代のビジネススタイルとは正反対の仕事がある。素材選びや製法に一切妥協しない。値段は高いが、百年使うことができる「ホ ンモノ」を創る。横浜クラシック家具の伝統を守る「ダニエル」の企業姿勢から現代人が学ぶべきことは多い。
■西洋のデザインと日本の技術が融合した横浜洋家具  横浜で洋家具が作られ始めたのは1863年のこと。開港を機に横浜に居住した英国人ゴールマンが、日本に持ち込んだ椅子の修理を、横浜に住む馬具職人原安造に依頼したことが始まりだった。修理の出来栄えに感心 したゴールマンは、本国イギリスで作られている洋家具と全く同じものの製作を日本の職人たちに注文した。これをきっかけに、日本の職人たちは高品質な家具作りの技術を磨いていった。やがて職人たちは、四季のあ る日本の風土に適した素材を使い、日本にやって来る外国人のための洋家具を作り始めた。それが横浜洋家具だ。
その最大の特徴は、飽きの来ないクラシックなデザインと、滑らかな曲線に仕上げられた無垢の木の美しさだ。ダニエルでは、イギリスのビクトリアンやジャコビアン、フランスのロココ、アメリカのコロニアルなどの特徴 を生かしながら、時代に左右されないデザインを確立した。素材は高級家具材である樺桜(カバザクラ)の無垢の材木を用いる。北海道の厳しい寒さの中育った樹齢200年前後の樺桜で、優美で上品な質感に加え、堅 牢で長く使用しても狂いがこないので、長期の使用に耐えることができるものだ。複雑な曲線は、形に合わせて職人自らが作った専用の刃を使うことで生み出される。刃の種類は200以上にも上るという。横浜洋家具は、 木を知りぬいた家具職人たちの手によって、木が本来持っている美しさと温もりが表現された、まさに「木の芸術品」である。
 ダニエルは横浜洋家具の誕生の地・元町に本社を構え、東京に新宿・虎ノ門など計5カ所のショールームを持っている。また、洋家具の魅力が五感を通して体験できるよう、伊勢原にユニークな研修センター「The Daniel Studio」を作った。同社代表取締役社長の高橋保一さんは、こうした「魅せる」ための施設を作った狙いをこう語る。「モデルルームはお客さんに実際の完成のイメージをもってもらうことと、さらには木の温もりに囲まれた 暮らしの環境提案するために作りました。マンションの白い壁や天井のエッジを見るモダンな生活は疲れます。この木枠はパネル式で、後付けでマンションにも簡単に取り付けられる。都会でもこうした豊かな暮らしがで きるという可能性を見せたい」。
ダニエル ■「百年家具」品質の秘密は「ほぞ組」にある  横浜洋家具が、3世代、4世代にわたっての使用に耐えることができる「百年家具」の品質を持つ秘密はどこにあるのか。それは、「ほぞ組」と呼ばれる日本古来の仕口(木の組み方)にある。木の接合部分を凹凸にして 組み合わせる方法で、釘は一切使わない。そのため古くなった家具でも組まれている木をバラバラに分解できるので、修理する際にきめ細かな微調整をすることができる。緩んだ部分を直し、綺麗に塗装し直せば、再 び新品のような美しく堅牢な姿を取り戻すことができるのだ。こうして作られる横浜洋家具は、一種の「形見分け」のように親から子へ、子から孫へと世代を超えて受け継がれ愛されている家具なのである。
 以前、弊紙で紹介した横浜家具工房「蓮華草」では、分業を行なわず、木の選択から仕上げまで一人の職人が全てを担当するスタイルだった。しかし、「ダニエル」では完全な分業制を採用し、それぞれのパートのスペ シャリストである職人たちが協力して1つの家具を創り上げている。
技と新感覚を備えた職人が導く!伝統工芸「横浜家具」新時代の夜明け ■「家具の病院」で見えてくる現代社会の縮図  同社のモノを大切にするという理念が結実したものが、1998年に同社が開設した「家具の病院」だ。ここでは同社の家具にかかわらず、壊れた家具を持ち主から預かり、家具作りのベテラン職人たちが時間と手間をか けて丁寧に修理を行う。椅子の張替え、家具の再塗装、ガタ止め、キズ・破損直しなど、細部まで職人の手が入ることで、壊れた家具が見事に蘇る。生まれ変わった家具を持ち主に引き渡すと、時には新品以上の丈夫さ 、快適さになって戻ってきたと褒められることもあるという。
しかし、「最近持ち込まれる家具はひどいものが多い」と修理に当たる職人たちは嘆く。安い家具では、コストダウンのため、素材にはチェリーやマツ、パインなどの柔らかい木や合板を使用している。組み立ての手間 を減らすため、木材同士を組み合わせる際には「ダボ接合」と呼ばれる簡易的な方法を使う。中には、ただ木が全く接合できていなかったり、スチールを使って簡単に止めているだけのものもある。しかし、一般消費者が 素材や構造のことまで考えた家具選びはできない。見栄えが良ければ、どうしても低価格のものを選んでしまう。
 どうしてこのような家具が市場に溢れるようになったのか。それは高度経済成長期の工業化の波が、家具業界にも及んだからだ。その最も象徴的な出来事は、合板の発明だ。もともと自然物である木材には、一本一本 に個性がある。湿度や温度、時間経過によって反りや若干の伸縮などの影響が出るので、木を熟知した職人でなければしっかりと扱うことができない。しかし、薄い板を何枚も重ねて接着剤で張り合わせる合板なら、自 然物としての木の個性はなくなる。材料費も格段に安くなり、機械で加工しやすい。合板の登場によって、木は工業用素材として扱うことができるようになったというわけだ。
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