ID : 11172
公開日 : 2009年 5月28日
タイトル
建設業の林業参入進むか 福島県が先導
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/fukushima/090528/fks0905280241000-n1.htm
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写真:
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■「仕事・人手不足」解消…安易な事業に懸念も
公共工事の減少により仕事不足に悩む建設業と、人手不足が深刻化している林業のマッチングを図ろうと福島県が動き出した。県は今年度から新事業として、建設業者を対象としたチェーンソーの使い方実習や森林知
識の講習会などを実施。将来的に、建設業者が林業に参入するためのきっかけにしたい考えだ。だが一方で、安易な異業種参入に懸念を示す既存の林業事業者も存在する。県、林業事業者、建設業者、それぞれの思惑
を探った。(小野田雄一)
15日、「県林業研究センター」(福島県郡山市安積町)でチェーンソー実習が行われ、けたたましいエンジン音が付近の山中に響き渡った。この日参加したのは、県の募集に応じた複数の建設業者の従業員ら計29人。
参加者は慣れない手つきでチェーンソーを操作し、木材の切断作業などを行った。
会津地方の建設業者に勤務する古川真志さん(38)は「チェーンソーはほとんど触ったことがなく、扱い方が難しかった。しかし実際に会社が林業に参入すれば、自分たちで考えて作業しなければならない。私が同僚
を指導したり、安全を確保する場面があるもしれないので、よく学んで帰りたい」と話した。
従業員を同実習に参加させたある建設業者は「公共工事の減少で、老舗ですらどんどん倒産している。ノウハウの蓄積には時間がかかるが、生き残り策の一つとして林業参入も検討しており、今回の講習はいい機会だ
った」。講習を異業種参入のきっかけとしたい県としては、いい滑り出しとなったようだ。
県が異業種参入促進事業を開始した背景には、林業の人手不足問題がある。
県林業振興課によると、直近の調査(平成17年)での県内の林業従事者数は1755人。4794人いた昭和50年の3分の1近くまで減った。さらに平成27年には1190人まで減少すると推計され、必要な山林整備さえま
まならなくなるおそれもあるという。
同課は「林業従事者の定着率は4割といわれている。だが異業種参入なら、建設業者の従業員という身分で働くため定着率は関係なくなる。さらに建設業者にとっても、景気が回復するまで林業で収益を得ることで、リ
ストラなどを回避できるメリットも期待できる」という。
また林業の採算性についても明るい見通しを示す。
「福島県と宮崎県は、森林面積、従事者数ともほぼ同じ。だが木材生産額では宮崎の約 160億円に対し、福島は約86億円と約半分に過ぎない。これは高性能な林業用機械の数が福島のほうが少ないため。そこで行
政として、重機などの導入支援も開始した。福島には収益を上げられるだけのパイは十分あり、既存の林業事業者との競争は避けられるはずだ」という。
さらに「作業に不可欠な山林内の道路作りでは、林業事業者より建設業者が圧倒的に上。相互に補完し合って、生産性を高められるはず」と既存の林業事業者にもメリットはあるという。異業種参入事業の未来は良いこ
とずくめのように感じられる。
だが、現場の林業事業者には異業種参入に対する不安もあるようだ。
各地の森林所有者の出資で運営され、所有者の要請に応じて整備を行う「森林組合」という組織がある。
県内のある森林組合の職員は「建設業者が新規参入した場合、最初はわれわれや民間の林業事業者の下請けとして働き、ノウハウを積むことになる。だがわれわれの仕事は森林所有者との信頼関係で成り立っており、
一度でも質の悪い仕事をされれば、二度と依頼が来なくなる可能性もある。実際、すでに林業に参入している建設業者の一部が、とにかく仕事をとるために安く受注し、質の悪い仕事しかしないという苦情も出ている」と
いう。
「確かに地域によっては、人手不足の解消や山林内の道路整備が向上するメリットもあるだろう。だが景気が良いときは林業には見向きもしないで、景気が悪くなったから林業参入というのは…。経済活動は自由とはい
え、ずっと林業一本でやってきたわれわれとしては戸惑っている」とも明かした。
県の思惑通り、林業事業者と建設業者の双方がメリットを得る関係になるのか、それとも両者に軋轢(あつれき)が生じてしまうのか-。その答えが出るのは、もう少し先の話のようだ。
■建設業の異業種参入 近年の公共工事の減少に伴い、異業種参入によって活路を見いだそうとする建設業者が増加している。主な参入先は農業、福祉分野、林業など。
一方で、ノウハウの蓄積に時間がかかる▽設備投資費がかさむ▽参入先の分野も不景気-などの理由で、赤字がふくらみ撤退する業者も出てきている。
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