ID : 7023
公開日 : 2008年 4月 3日
タイトル
被爆樹木からのメッセージ--音楽家・一宮千空さん
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/hiroshima/voice/news/20080403ddlk34070625000c.html
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元urltop:
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写真:
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オーストラリアの先住民族アボリジニに伝わる筒状の縦笛「ディジュリドゥ」を吹き始めて、約10年。1・5メートルほどもあるユーカリの枝や幹をくりぬいて作られるが、竹や塩化ビニールの水道管からもできる。広
島で被爆した樹木を材料にして自前で作り、平和を祈る演奏活動を続けている。
「ドレミのない楽器だから、強弱を自由につけて吹けばいい。吹き方は、音が途切れないよう、鼻から吸った息を口から出し続ける。最初は息を吸いながら吐くというのが難しかったが、音を出すだけでも楽しかった」
演奏を始めた当時、1カ月ほど体調を崩していた。沈んだ気持ちの中、毎日のように平和記念公園を歩いた。
「通りかかった被爆アオギリからものすごく生命力を感じた。被爆の惨禍の中で奇跡的に生き残った木から勇気づけられた気がした」
それから毎月、満月の日の夜明けに、アオギリの前で即興の演奏をしている。
「誰もいないところで吹くのが気持ちいい。満月が見えていたところで朝日が出てくる。美しい情景の中で、笛の音楽をささげて祈りを込める」
自分で木から笛を作るようになったのは、04年の大型台風でたくさんの木が倒れたのを見た時からだ。異常なほどの台風の多さに生命の危機を感じ、「木の代弁者になりたい」と思った。これまでに木製のディジュリドゥ
を十数本作った。せん定作業に立ち会うなどして譲り受けた白島の被爆クスノキや、広島城の被爆ユーカリから作製したものもある。
「貴重な被爆樹木から作る時は、失敗は許されない。笛がどんな木から作られたかは大きな意味を持つ。被爆した木なら広島の心、歴史を伝えることができる」
笛を作った後の余った木材で、ボールペンや工芸品を作り、小学校などに寄贈もしている。
「折れた木やせん定した木から、笛などを作ることで、二つの“ゆうこう”が実現する。無駄にしないという意味の『有効』と笛や工芸品を介した縁が増えるという意味の『友好』。木の持っている意味をさまざまな形で伝
えていきたい」
最近は、人前での演奏を減らした。木と向かい合った時、一番落ち着いて、自分自身を素直に表現できる。
「将来は、心の支えとなった木や花に対して感謝の意味を込めて、樹木のための音楽家になりたい。人と木をつなぐ存在になれたらうれしい」【
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