ID : 6318
公開日 : 2008年 2月13日
タイトル
国楢の里 ものづくり担う誇り
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000130802120001
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元urltop:
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写真:
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吉野町東部の5地区からなる「国栖の里」の魅力は、古事記や日本書紀に登場する古い歴史と、美しい自然。そこには700年を超す伝統の和紙、吉野杉の端材を材料にした割り箸など、ものづくりの伝統が息
づいている。近年、陶芸やガラス工芸の作家たちが工房を構え始めた。新旧のものづくりの担い手たちは刺激し合い、新しい「吉野ブランド」を目指す。(神野武美)
同町新子の森浦武彦さん(67)の「自然木工房木遊館」(0746・36・6981)を訪ねた。室内の壁には、長さ数センチの昆虫やドングリ形キーホルダー、木の枝を針にした時計など、楽しい木の作品がずらり。
「塗料はほとんど使わない。クヌギやサクラ、マツの皮など自然の色をいかします。山に入って、ふと木の枝を見るとアイデアが浮かんでくるんです」
27歳で父親から割り箸製造を継いだ後、「同じ物ばかりを作る仕事はいや」と木工に転身。アイデアを凝らし、杉材のとっくり、ヒノキの酒升などを開発して大いに稼ぐが、「大量生産に飽きた」と12年前、手先の器用さ
と遊び心を発揮して、木の細工物づくりや木工教室を始めた。「収入はがた減り。でもこの方が楽しい」のだとか。
和紙の植貞男さん(69)やガラス工芸の山田裕子さん(47)らと組んで新しいデザインへの挑戦も。年輪が密で最高級材といわれる吉野杉など、豊かな自然と伝統が生んだ素材に新しい感覚を取り入れ、世界に通用
する吉野ブランドを目指す。森浦さんは「そのためにも、いろんな工芸の仲間が国栖に来て活動してほしい」と話す。
森浦さんが会長を務める「国栖の里観光協会」(0746・36・6838)は06年8月に発足した。申し込めば陶芸、ガラス工芸、紙漉き、箸作りが楽しめる体験型観光の拠点だ。国栖は、古事記に「先住民に神武天皇が与え
た名前」とある由緒ある地だが、観光名所はない。工芸という形で現れた歴史と伝統が最大の売り物のようだ。
☆★☆よりみち☆★☆わきみち☆★☆まわりみち☆★☆
◎住民が守り続けた舞
応神天皇(在位270~310)に国栖の人たちがささげた歌舞が由来という「国栖奏」は毎年旧暦1月14日(今年は新暦2月20日)、浄見原神社の舞殿で地元の12人の翁が舞う。保存会長の辻田一雄さん(96)によると
、その後、宮中争いの難を逃れてきた、後の天武天皇をかくまった功績により宮中の儀式で舞われていたが、やがて途絶えたため、1185年、地元民が同天皇ゆかりの吉野川の崖上に同神社を建立。毎年、奉納している
という。
◎体験工房 紹介します
吉野山・上千本口の民宿「太鼓判『花夢・花夢』」(0746・32・3071)は、宿泊客に国栖の里の「ものづくり体験」の工房を紹介していて、車で送迎もする。体験料は1千~2千円(材料費込み)と格安で、宿泊代も1泊2食
付きで6千~1万円と手頃。宿泊客にプレゼントしている国栖産の夫婦箸(4膳セット)の箸袋の和紙は、名刺やはがきになる。主人の東利明さん(55)と妻・春美さん(55)は「花見以外の『もうひとつの吉野』も知ってほし
い」。
☆★☆笑顔に こんにちは☆★☆
◎吉野の色見つけた
「この土地に来て、森林をイメージする緑『吉野の色』を見つけました」と言うのは、「国栖窯」(0746・36・6818)の森本修さん(60)。橿原市出身で、大学卒業後の34年間は関東暮らし。6年前に独立し、国栖へ移っ
た。アユの模様入りの陶器を焼くと、地元の人は「桜鮎ですね」。そんな粋な反応が返ってくる土地柄を気に入っている。
◎しきたりを楽しむ
「ガラス工芸SO‐RA工房」(0746・36・6343)の山田裕子さんは5年前、「季節感の無い都会では良い作品はできない」と、大阪から工房を移した。当初は、伝統行事や冠婚葬祭のつきあいの多さを負担に感じたが、
「そんなしきたりが千年単位の時間の流れや四季折々の変化を感じさせ、私の作品にも影響を与えているんです」。
◎和紙もクラフトも力
植和紙製造(0746・36・6134)は、伝統の紙漉きだけでなく、掛け時計、菓子器、帽子など和紙クラフトにも力を入れる。代表者の植貞男さんは「柿渋を塗れば水にも強い」。最近、東京で発表した新製品は、30セン
チ角の木枠にヒノキの皮をすいた和紙をはめ込んだ正方形パネル。色の違いなど7種類あり「字を書くのも良し、壁の装飾にもなる」。
◎京大の祝い箸作製
辰田製作所(0746・36・6205)の辰田敬美さん(53)は昨年に続き今年も、京都大学が卒業生に贈る長さ50センチの祝い箸3300膳を手作りする。小学生の箸作り体験も昨年夏から始めた。サンドペーパーで材料
を磨いてもらうと、それぞれ個性的な仕上がりに。「この箸が食事の時の話題になり、家族の会話を促進してくれるとうれしい」
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