ID : 5901
公開日 : 2007年 1月 1日
タイトル
村の宝森を売り込め
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20071231-OYT8T00515.htm
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元urltop:
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写真:
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県の東北端に位置する、人口約1600人の西粟倉村は今年、県外から新しい村民を迎えようとしている。村は昨年末、都市住民に向け「田舎暮らしをしながら、働いてみませんか」と呼びかける事業を始め、現
地で研修を受ける内定者も決めた。総面積(約58平方キロ)の95%を占める、森林という〈村の宝〉を生かす森林作業や木工デザイナー、エコツアーの企画・運営という3種の仕事を用意。村は合併の道を選ばず歩み続
けて、今年119年を迎える。ここに生きる人々、住んでみようという人の思いに触れた。
村民募集の事業を進める村雇用対策協議会は11月下旬、神戸、大阪で説明会を開いた。集まったのは両会場で40人。20~50歳代の働き盛りの男女13人が面接を受けた。内定者は1月中旬から約3か月の研修があ
る。仕事だけでなく、村民との交流会も。働きぶり、村との“相性”を見て、春に村民として迎えられる。
仕掛け人の一人、村総務企画課長補佐の関正治さん(50)は「放っておいたら過疎が進むだけ。村に住んでもらうため、雇用の場を作りたい」と言う。
村民になろうとする人の受け入れ先の一つに、こんな会社がある。同村長尾、国里哲也さん(34)が2006年に設立。村内の森林を手入れし、切り出したヒノキや杉を製材、無垢(むく)材の家具をデザインする。資本金1
0万円で、社長の国里さんや役員を含め6人の小さな会社だ。
かつて村森林組合に勤めていた国里さんは、約3年前、ヒノキ材で積み木を作り、大阪の保育園に届けた。ヒノキの香りが自慢だったが、子どもたちが「トイレのにおい」「玄関のにおい」と言い出した。「芳香剤などの人
工のにおいに慣れ、木のにおいを知らないのだろうか」とショックを受けた。
設立した会社には「木の里工房 木薫(もっくん)」と名付けた。木の薫(かおり)を届けるという意味を込めた。保育所の机やいす、家庭向けのテーブルなどを夢中で作った。1年目で売上高約4000万円。何とか黒字を計
上できた。
顧客に「山を見せてほしい」と要望されたことがある。自分が使う家具が生まれた森を訪ねたいという。国里さんは「この会社は、村の森の木が家具になるまでのストーリーを売っている」と考えるようになった。
同村影石の林業新田一男さん(75)は昨年5月、元の村有林で、県外の人に渡っていた24ヘクタールの森林を買い取った。新田さんの森林は41ヘクタールに広がった。雨の日以外は妻の春子さん(71)と一緒に山に
入る。巻き尺を持ち、木々の育ち具合を見て回っている。新田さんには孫が5人いる。「ちゃんと手入れをすれば、子や孫の代に立派に育っているはず」。そのためにも将来、森林や国産材の価値が見直されていること
を願う。孫の一人、村立西粟倉小5年の壮史君(11)は時々、新田さんと一緒に山を歩き、山の仕事に興味を持ち始めている。
村の2007年度の一般会計予算の規模は14億2700万円。自治体の財政の安定度を示す財政力指数は0・155と県内で最も低い。人口は1960年の2714人から1000人以上減った。それでも1889年の村制開始以
来、合併したことがない。「平成の大合併」でも2004年夏の意識調査の結果、村民の6割近くが単独で歩む道を望んだ。
「画一的に人口を膨らませる合併では村は良くならない」
そう語る16代村長の道上正寿さん(57)は「都市も経済も走り続ける中で、変わらない〈ゆっくりズム〉の価値が見直される。田舎の役割が大切な時代になる」との信念を持っている。
村に流れるゆっくりとした時間は、激しい競争社会の中で輝きを放つのかも知れない。(山本啓二)
◇ ◇
限界集落という言葉が頻繁に聞かれるようになった。少子高齢化による人口減に対応し、自治体財政の安定、効率化を目指して国が進めた「平成の大合併」を経て、県内の市町村の数は78から27に減少した。そんな
中、地域の力や、住民同士の絆(きずな)が弱くなったと言われる状況をはねのけようと、各地の自然環境や伝統産業、歴史・文化、マンパワーなどの〈宝〉を生かし、奮闘する人々の動きを紹介する。
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