ID : 3701
公開日 : 2007年 5月 4日
タイトル
みどりの日 森の豊かな恵み生かして
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新聞名
山陽新聞
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元URL.
http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/05/04/2007050409322712002.html
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写真:
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アニメ作家の宮崎駿監督の重要なテーマとなっているのが、人間と自然との関係だ。森が重要な役割を担っている。
「風の谷のナウシカ」では、人間は自然の破壊者として登場する。軍人は「森など焼き払えばよいではないか」と語り、自然の営みへの思いやりはない。これに対し「となりのトトロ」では、鎮守の森にすむ不思議な生き物
トトロと子どもたちの交流を描く。「木と人は仲良しだったんだよ」と父親が娘たちに語るシーンに、身近な森林への愛着や共感が語られている。
「もののけ姫」になると、再び人間と自然との対立が描かれる。たたら製鉄操業のために森を伐採して動物を殺す人間たちに、森の神々はついに生存をかけた戦いを挑んだ。開発による森林の荒廃を背景に、自然と
共存する大切さの気付きと、森林の再生への願いが込められている。
温暖化ガスを吸収
一九九七年、国連の気候変動枠組み条約に参加する国・地域が京都市に集まって地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減目標を決めた。
採択された京都議定書では、先進国全体で二〇〇八年から一二年までに九〇年比5%の温室効果ガスを削減する。日本は6%減らし、3・9%は森林吸収によって賄うとした。しかし目標達成は厳しい状況だ。日本の〇
五年度の排出量は、九〇年を8・1%も上回り、森林吸収分も目標を大幅に下回りそうだ。
もともと森林が多い日本で吸収分を増やすために新たな森林を造ることは難しく、間伐や植栽などにより既存の人工林を若返らせることで温室効果ガスを吸収させる方針だった。
しかし安い輸入材が出回るとともに、山里の高齢化も進んだ。林業に対する意欲が減少し、森林の維持管理に手が回らなくなったことが大きな理由だ。政府は危機感を募らせる。
豊富な木材資源
木材は環境に優しい再生可能資源だ。大気中の二酸化炭素を吸収して成長したので、エネルギーとして燃やしても二酸化炭素を大気に戻すだけで総量は増やさない。木製品を長く使い続けることは、二酸化炭素を閉
じこめておくメリットもある。
日本の国土は三分の二が森林に覆われている。戦時中は荒廃したが、戦後は杉やヒノキの植林が続けられ、森林全体の四割程度が人工林という木材資源大国になった。伐採して利用可能となる林齢四十六年以上が面
積で二割を超えている。
しかしこれだけの資源が日本では生かし切れていない。経済協力開発機構(OECD)加盟国二十五カ国で蓄積量と年間伐採量との比率は、〇五年調査では日本は0・53%で最低だった。加盟国平均の1・28%からも大
きく下回っている。官民挙げて国産材の利用を拡大することで、保全と利用を両立させた森林としたい。
ふるさとの木で
国内外で森林回復や森づくりなどの取り組みを進めている国際生態学センターの宮脇昭研究所長は、ふるさとの木による森づくりを提唱している。これまで全国千二百カ所以上で市民とともに植樹運動を繰り広げてき
た。
その際に植樹を勧めているのは、鎮守の森などとして各地に残っているシイ、カシ、タブなどの潜在自然植生の常緑広葉樹だ。厚い葉の特徴から照葉樹とも呼ぶ。
大雨に打たれても土が流れず、保水機能が高く、落ち葉と土壌で雨を蓄えるので、鉄砲水や洪水を防ぐ機能もある。根が深いので台風や地震でも倒れにくく、山の斜面を維持する能力も高い。荒廃した森林を再生させ
ることができれば、森林の恵みは豊かなものになろう。
森林ボランティアが各地に育ってきている。過疎化の進む里山の維持など森づくりにかかわり始めた。〇三年には全国で千百六十五団体と六年前に比べ四倍に増えた。多くが五十、六十代の団塊世代で、森林の保全作
業のほか、普及啓発などの環境教育、山村と都市の交流などに当たっている。森林を愛する人の増加は、林業関係者にとっては心強いものがあろう。
きょうは「みどりの日」だ。新緑に浸りながら、郷土づくりに果たす森林の役割について、じっくりと考えてみてはどうだろうか。
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