谷内さんは全国一の蓄積量がありながら、十分に活用できていない県産アカマツ材の利用に着目し、1993年から研究を続けてきた。
アカマツは春から夏にかけて、木の内部にカビが発生して青く変色する青変被害が出るため、商品価値が下がり、通年出荷が難しかった。
青変被害には菌が関係していることが知られていたが、谷内さんはキクイムシが菌を運ぶことを発見。これまで有効と考えられていた防カビ剤だけでなく、防虫剤を伐採直後に散布することで、被害を食い止める ことに成功した。
青変被害のほか、木の表面を硬く加工し傷がつきにくくする技術や、塗装処理で防火性能を向上させる技術を開発した成果も論文にまとめた。論文名は「岩手県産アカマツ材の建築用内装材としての利用技術」で、 3月に学位が授与された。
品質の高いアカマツは県北、沿岸に生育しており、利用促進は県が力を入れる県北沿岸振興に直結する。
審査を担当した秋田県立大の飯島泰男教授(木材高度加工研究所)は「学術的に高いレベルにあるだけでなく、県の情勢を踏まえて、現場に役立つ技術を長年積み上げてきた。学位を取得するのに十分な素養があ る」と高く評価した。
谷内さんは「今後は経験豊富な現場の人と情報を交換し、薬品に頼らない青変対策を開発したい」と意気込んでいる。