出材は専門に行うグループがあったので、丸太の数量がある程度以上まとまっている場合、請負事業として実施することが多かった。出材範囲は、伐採地に棚積みしている丸太を、「棚崩し」から始まり山元の一時集材箇所を経由して城川縁まで運び、出水時に備えてはえ積みするまで、としていた。
①準備
十分乾燥した丸太が出材されることになる。出材経費や荒場補償費、他人土地の通過料、川縁の丸太の置き場所等々の諸問題が解決しだい、仕事を請け負ったグループの作業員は出材の準備作業に取りかかる。
対象の山林のほとんどが、木馬による出材を必要とすることが多かった。該当する山林が自宅から近い場合、その山裾に木馬小屋(休憩所も兼ねる)を建てる。しかし、対象林が遠いときは宿泊のための小屋を建て、木馬も保管する(小屋はいずれも杉皮葺きである。図②参照)。
②小型楔作り(シッポと名付けている・・・以下シッポと呼ぶ)
雨で屋外の仕事が出来ない日などに、仕事仲間の中で広い納屋のある家にグループの作業員が集まり、用意していた樫(かし)の生木を12~13cmの長さにそろえて鋸で切る者、さらに、小割したものを砥(と)ぎ澄(す)ましたヨキ(斧の一種)で楔型に削って仕上げる者など、それぞれ分担を決めて仕事を進めた(このシッポは、釘(くぎ)の変わりに使う。ちなみに、1kmの木馬道を架設するには、約5千枚のシッポを必要とする。シッポ削りは、平均して1日一人当たり約400枚・・・)
山小屋に泊り込みで作業を行う場合は、夕食後、薄暗い灯油ランプの下、山小屋の中央の通し土間で大きな焚(た)き火をし、その明かりでシッポ削りの夜業をした。作ったシッポは短時間に乾燥させなければならないので、焚き火のそばに並べたり、篠竹(しのだけ)で「ダラ」と呼ぶ浅い大きな籠(かご)を編み、シッポを入れ、焚き火の上に吊(つ)るして乾燥を早めた。