丸太材の管流
管流の準備
●丸太材が川縁に集積し終わると、丸太材の所有者等(代行者を含む・・・以下事業主と呼ぶ)は、やがて来る増水時に備えて、丸太材の数量を勘案しながら単独で管流を実施するか、あるいは他の所有者等と合川(あいかわ)で(複数の所有者等が相談した上でどちらかが事業主となる)管流するかどうかを決める。・・・合川の場合は当然両者の丸太材は混成する。
●事業主は川縁に集積している丸太材と、鉄砲堰によって流送してくる丸太材とを併合しての管流を予定している場合には、城川縁組作業員と鉄砲堰組作業員との二組に組分けを考えておく(理由は鉄砲堰による流送は谷幅も狭く、一国に水嵩(みすかさ)が上がるので慣れていないと危険が伴うため、特に経験が必要であった)。
●1回の管流(一川(ひとかわ)と呼ぶ)で、流送する丸太材の数量の目処(めど)を、約2,000石(約556立方メートル)とし、2割内外の増減は許容範囲内であった。また事業主等は、1回の管流期間中に生ずる、丸太材の損失(折損木や沈没木)率をおおむね3~5%と予想していた。
●事業主は引き水の度合いに合うよう、管流作業を効率的に進めるため、作業員全員の昼食については、担当者を決めて1箇所で炊事し、それぞれの流送作業現場まで運んで支給できるよう、必要人員の手配と併せて米・副食・運搬容器等準備した(図③-2)。
●管流中に夜間不意の増水等により、緊急に丸太止め場を(図⑤-2)作る必要ができた場合を予想し、石油松明(たいまつ)を点検しておく(図③-1)。
管流実施時期の決断
管流実施中で一番恐れたのは、再増水による丸太材の太平洋への流出であった。
しかし、あまりこのことにこだわりすぎていると、水位が下がり丸太材が流れない事態にもなるので、事業主は空模様を見ながら実施時期の決断に、神経をすり減らしそうだ。
特にラジオも電話もなかった終戦時には、管流実施への決断は経験と勘を信じて、神様に祈りながら決めたと言っておられた。