⑥木馬道
▲図⑥ 終点付近の図と木馬の図
●木馬の運行:木馬には丸太を満載(平均して末口直径13cm内外、長さ3mの丸太が20~25本、同直径20cm内外、長さ4mの丸太が3~4本)する。木馬道を曳行(えいこう)している途中で勾配のない所へ来ると、突然ピーピーと木馬が鳴き始める。これは摩擦音であって滑りの悪い証拠であるので、バン木(道にしている丸太)に油を塗り、渾身(こんしん)の力を振り絞って通過する。
また、下り勾配の急な所に来ると、満載の丸太がぐいぐい背中を押してくる、ここでは、あらかじめ用意しているブレーキ用の細いワイヤー(一端立木等に固定し、他方は木馬道の上に這(は)わせてある)を取り上げ、木馬の梶棒(かじぼう)に巻き付けてブレーキとし、ごく少しずつ緩めながら坂道を徐々に進めた。
この木馬曳きの仕事は、夏は体中から滴る汗でよく滑るし、また、体力の消耗も著しい。冬はまた、木馬道のバン木に霜が積もりよく滑った。これを防ぐため地下足袋に藁縄(わらなわ)を巻くなどしたが効果は短く、常に細心の注意が必要であった。
このように最も危険で最もきつい仕事の一つであった反面、自分で一度に大小の丸太20数本を長距離運ぶことの出来た満足感もあった、と経験のある方は話された。