特殊例を紹介しょう。
樹齢100年以上の古木の流送である。
増水時に水加減を見計らい、どのくらいの加減かというと、ふだん水面に顔をのぞかせている岩が沈み、方々に渦が 見える状態で、素人目にはたいへんな大水である、そんな増水時に流す。
私が見たときはふつうの筏の第四床の後ろに古木をつけていた。
筏には4人の乗り師が おりいずれも真剣な表情をしていた。
かれらは竿の代わりに櫂(かい)を持ち掛け声に合わせて一斉に漕ぎはじめる。
すると筏がぐいぐいと横に寄っていくのがめだって見えた。
振れるのではなく筏全体が一直線のまま寄るのである。
こうして筏は川下へと消えていった。
筏師、つまり組み師、乗り師といえば川達者ばかりであるが、それでも一歩誤ると大事故になる。
とくに急流で衣類を身につけたまま川に落ちた場合、生命にかかわることもある。