材木に目牙を切るには目牙切り斧という胴体が長く薄刃の特殊斧を使い、材木の両端7センチばかりに目牙を切り抜く。
材木の太さによって目牙の打ち抜き方はほぼ三種に分けられる。
細い材木では両側から打ち抜く、 これを打ち抜き目牙という。
やや太いときは三方から切り込み、それぞれを三つの穴で通じさせる、これを三つ目牙という。
太い材では四つの切り口を入れ各二つの切り口を一つの穴で通じさせる。
すなわち穴は二つにな る。
これは三つ目牙に属するが、いちおう区別している。
これらの目牙に稔を通して材木をつなぎ合わせて筏を組み上げるのである。
目牙組みの組み方、稔の使い方の実際を説明しよう。
まず、太さが同じような材木を、末幅五尺余(約150センチ)になるょう並べ、その一方を引き上げて末を先に 組む。
水にふやかした稔を使いやすいように小稔(稔をさらに細く割ること)をかけ、目 牙に差し込んで8の字形に結ぶ。
打ち抜き日牙でも、三つ日牙でも三本の材木を結び 合わせる。
最初、三本の材木を結び合わせて、ついで二本を加えて先に結んだうちの一本と合わせて三本のかけ合わせになる。
したがって材木の本数はつねに奇数になるのが原則だが、材木の大小によっては偶数 になることもある。
末が組み終わると振り回して、こんどは本を、同じ要領で組み上げる。
とくに太い材木を組めば、3~5本で末幅五尺前後になる。
この場合、材木二本を一本の稔で結び合わせる(二本縛り)か、あるいは末を三本縛りに、本を二本縛りに することがおうおうにしてある。
これらは材木の本数にあわせて三本床、四本床、五 本床と特別によび分けている。
組み上げた筏一個を一床とよび、二間(四メートル)材であれば七床をもって、二間材と一〇尺(三メートル)材の組み合わせであれば八床(やとこ)をもって一乗(ひとの)りという。
上図は打ち抜き目牙を組みあげた細木床である。
下図は五本床を示す。
五本床ともなるとかなりの太材になり、筏の前にはつながず、中間から後方につなぐ。
三木床になるとだいたい二本縛りだが、図は二本縛りと三木縛りを示した。
稔はいずれも8の字形になる。
最近ではほとんど見かけなくなったが、このころはかなり太くて長い桧の直材を桁材に用いており、桧の長材をそのまま流送したものである。
これら長材を筏に組む場合は、四床、五床の後ろにつけ、これを一乗りとした。
原則的に筏は末を先に、本を後に組むが、例外的に桁材は逆方向に組む。
直材の檜の長材を桁材に用いるが、これの伐出は先に小枝をつけたままであり、したがって筏を組むにも本を先に組まざるを得ない。
ちなみに桁材は、船の帆柱などにも使われた。