しばらく闊葉掛の伐出について説明する。
主に谷あいにつくる打ち付け修羅はほとんど短材による。
これには竿は一切もちいない。
まず止め補子を埋め込み(切り株や岩石にもたせることもある)地ならしをする。
枕を地ならし程度に置き、次いで溝途。
二本溝途と三本溝途があるが、現場にあわせていずれか並べる。
最後に溝途脇、太い材木で加定を設け、迫りに適当なものを入れ、土石をかきこんで修羅を固めて仕上げる。
この作業を繰り返して完成する。
打ち付け修羅の出来上がりを図でみるかぎりでは、ただ材木を 並べただけの簡単なもののようにみえる。
だがそこには数知れない苦労がある。
谷あいには当然、大小の岩石が転がり、あるいは 重なって段々になっている。
くぼんでいる個所もある。
また水たまりや雨による増水など設置場所の状態は異なる。
これら状態を改めなければ修羅掛けはできない。
つぎに二、三の対処法を紹介する。
たとえば増水時に修羅が浮き上がらないように迫り固め、修羅の上を水が流れるようにする。
また、水たまりやくぼみを石で埋められない時は 奈留(なる)掛け方式をとる。
地形と状況によって修羅を1年以上使うことがおうおうに してあり、それを見越して設けなければならない。
岩石が障害になる場合、避けてコースを設置するのが最善だが、 避けられないときは石を玄能でたたいて欠き割る。
それでも及ばない大きな石、堅い石は焼く。
強い火勢で石全体を焼き、ころあいを 見計らって水をかける。
すると石はばちばちと音をたててひび割れる。
それをたたき割るのである。
近くに水がないときは雨降りを待つ。
これらは図に表すことのできない苦労と努力といえよう。