山小屋といえば、現在では登山者の宿泊所を連想 するが、昔は伐出夫の泊まる粗末な小家を呼んだ。
丸木で小鼻組みをして屋根と壁を杉皮で雇った だけで、窓はつっかい棒で開閉した。
図より粗末 なものであった。
小屋のなかには敷き板はない。
杉葉を刻んで敷 いた上にむしろを並べ、そこでごろ寝した。
間取りを図に示す。
人数に応じて横に広くつく られた。
たき火をするところには自在かぎがあり、いつも鉄瓶が掛かっていた。
夏は蚊に攻められるので煙でいぶし、冬はたき火で暖をとった。
聴人各自の権利はむしろ一枚分である。
小屋のなかでは人の後ろを通ってはいけない、という暗黙の規則があった。前の補燵の上を通らなければ ならず、補燵の上に食物を置いていて人にまたがられても文句はいえない。
仕事がらか、縁起には神経質である。
口をすべらせて縁起でもないことをしゃべり、先輩たちにしかられたものである。
伐出夫には階級があり、それによって小屋内の座る位置も決まっていた。
事業主を親方、総責任者・請負師を庄屋、事務員を小庄屋、庄屋代理を
予巧と呼んだ。