まつ
アカマツ クロマツ ゴヨウマツ
常緑の高木または低木。分布は北海道から屋久島にまで。日本では6種が自生する。葉が二葉の黒松(クロマツ]、赤松(アカマツ]、五葉の五葉松(ゴヨウマツ]などが知られている。
クロマツは、海岸の防風林として広く造林されたことや、荒地にも根付く先駆的な樹種のため、一般に海辺に近い処で見られ、アカマツは、内陸部に多い。こ
れらの松の性質は、一般的には比較的よく似ていて、特別でないかぎり、同じものと思ってさしつかえない。
日本を代表する木としては、スギや桜があるが、松を代表としても恥ずかしくないものだ。昔から絵や歌、文学などに一番多く利用されてきている。
松の語源は非常に多く、はっきりしない。調べる限り20以上の説があるが、大きく二つに分類される。「待つ」に代表される動詞の言葉につながるものと葉の
色や形に関するものとである。
万葉集に詠われている高木の中では、松が77首もあり、一番多い。それだけ万葉の人たちの中で、身近な木であったのだろうが、歌は松の長寿や緑が変
わらないことを褒め称え、永遠に「待つ」を松にかけたものが多い。
私の祖父が大阪に店を出し、父が実質経営者で仕事を始めたのが杭丸太の仕事であった。苦労したようだが、それなりに発展し、私たちの会社の基礎を
作った。
戦後の高度成長のおかげでビルの基礎に、地下鉄工事などに松杭や松矢板が相当量使われた。矢板は地下鉄やトンネルの土留め用に利用された。杭は
当時のビルの基礎に利用されて、そのまま地中に残っているものも多い。私たちの会社の仕事の中で、時々ビル解体時に引き抜いた松杭を引き取る事が
ある。五十年間、地中でビルを支えてきた松杭だが、水をかけて、洗ってやると、みずみずしい松丸太に生まれ変わる。新品の松丸太としてまた利用できる
のである。地中、特に水の中に入っている時は非常に耐久性がある木だ。他の木についてもいえることだが、酸素の供給がない場所では腐朽菌は活動でき
ないのである。今の時代では数少ないエコロジーな産業資材だが、今はコンクリートの杭にとって変わられた。
日本のアンデルセンといわれる
浜田広介(ひろすけ]の童話に「砂山の松」というのがある。人間といすかの物語である。
神は人間といすかを作り、「最後のひとつは残しておけ」と言って地上にやる。いすかの嘴は松笠の実を食べるのに好都合で、松林に住み着いた。人間は
生活に困って、松林を切ってゆく、おろおろと飛び回るイスカを見て、一本の松だけは残す。いすかはひとつの松の実を食べ残して死ぬ。十数年の歳月が過
ぎ、実は松となり、海を渡るツバメがその木で翼を休める場所になるのである。広介は当時の発展する世界と比較して、古来からの習慣にある、全部収穫
せずに、ひとつは残す先祖から受け告げられてきた知恵がなくなることに、危機を感じたのではないか。
森林を切る場合でもこのように、全部切り倒すのではなく、いくつかの母樹(ぼじゅ]を残すやり方もある。そこから新しい森林が再生される。全部切り倒して、そこに苗木を植える方法もあるが、どちらがより自然かは明
らかである。
- 学名
- Pinus thunbergii(クロマツ)
- 科
- マツ科
- 属
- マツ属
- 英名
- Japanese Red Pine、Japanese Black Pine、 Japanese White Pine
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