びゃくしん
西洋柏槇(セイヨウ ビャクシン)、イブキとも呼ばれる。
大きいものは高さ25メートル、直径2メートルに達する。よく分枝して円錐形の樹形で、幹はときに著しくねじれる。
本州の太平洋岸と瀬戸内海地方・四国・九州から朝鮮、中国大陸に分布し、日本では潮風の常に吹いている沿海地に多い。伊豆半島大瀬崎の自生地は
天然記念物に指定されている。庭園や神社、寺院に昔から植えられている。槙柏 (シンパク)と言って盆栽用に珍重されている。
樹皮は赤褐色で縦裂し、薄くはがれる。葉には鱗片(りんぺん)葉と針状葉の2つがあり、成木では大半が鱗片葉となる。果実は丸く肉質で、翌年の9~10月に帯紫褐色に熟し白粉をかぶる。2~4個の褐色
種子を含む。
ビャクシンの名は伊吹柏槇(びゃくしん)の略で、茨城県高萩伊吹山に多く生えていることからつけられた。
同じ仲間にややねじれて樹形のまとまりのよいカイズカイブキがよく知られている。変種に高山に生え、幹は地をはい、多くの鱗片葉からなるミヤマビャクシ
ン、九州の島々に生え、幹は地をはい、多くの針状葉のみからなるハイビャクシンがある。
材は堅硬で緻密で耐朽性があり、木目は光沢と香りがあり美しい。床柱、家具・彫刻材、寄木細工、鉛筆、薬用などに利用される。あるいは香材として白檀
の代用に用いることもある。
ビャクシン類はナシ、ボケ、カリンやリンゴの重要病害の中間宿主となるので、その栽培地の近くには植えてはいけない。
御坊市塩屋町は祖母(旧姓・羽山季、羽山繁太郎の妹)
の実家があるところで、南方熊楠が何度も尋ねてきた家である。その近くに光専寺というお寺があるが、ここに「新日本名木100選」にも選ばれている「光専
寺のイブキ」がある。私は父が子供の頃にここで遊んだり、「近くの亀山城の城主の怨念でこの大木がねじまがってしまったと信じていた」事などは知らずに
、偶然趣味の巨樹めぐりで訪れていた。なんともまあすごい樹形である。これでもかという風にねじれでいる。なるほど子供がそのように思うのも理解できる
と思った。
また、グリム童話に「柏槙の話」というのがある。現代人の感覚ではとても受け入れがたい物語なので、子供用の本では出てこないだろうが、岩波文庫には
掲載されている。柏槙の木は物語の展開に重要な役割を果たしている。生命の木であり、霊木である。
- 学名
- Juniperus chinensis
- 科
- ヒノキ科
- 属
- ビャクシン属
- 英名
- Juniper Berry、 Chinese juniper
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