はしばみ
北海道から九州北部、中国、朝鮮、ウスリー、アムールの温帯域に分布する。日当たりのよい山野にはえる。先駆樹種で成長は早いが、寿命は30年程度
と短い。
和名は木の実の榛紫実(はりしばみ)とか、葉にしわが多いので葉皺(はしわ)の説や、その他いろいろあるがはっきりしない。
葉は長さ6~12cm、若枝はときに紫斑がでるときがある。ニレ科のオヒョウに似ていて、オヒョウハシバミとも呼ばれる。3~4月頃葉が出るのに先だち開花し
黄茶色の太いひも状の雄花が咲き、垂れ下がる。
10月に2枚の総苞に包まれ、約1.5センチの球形の実がなり、食べられる。実は甘みがあって栄養面にも優れている。アイスクリームのトッピングやお菓
子の材料としての実はヘーゼルナッツといい、ヨーロッパ産のセイヨウハシバミの実。
榛色、はしばみ色といわれるが、ハシバミの実の色で、黄色がかった薄茶色を指し、ヘーゼルブラウンとも言う。古風な呼名だが、日本古来の色名ではなく
、明治以降「ヘーゼル」の訳語として作られた言葉。欧米では薄茶色の瞳を形容するのによく使う言葉。
大きな木ではないので、用材には向かないが、一般に強靭で折れにくいので杖、洋傘や工具の柄や薪炭材に使われる。
海外の物語にはハシバミはよく出てくる。イギリスの作家アリスン・アトリーの代表作「チム・ラビットのぼうけん」ではリスに励まされて、はしばみの実を持っ
て帰る主人公が書かれている。
また、シンデレラ物語では主人公を助けたのは魔女やカボチャの馬車ではなく、ハシバミの木であった。フランス人のペロー版「サンドリヨン」とグリム兄弟の
ものとはストーリーの展開が多少ことなるが、研究者によると現実的で教訓的な教えがある。
父のお土産にシンデレラが望んだのは義姉のようなドレスや宝石でなく、母のお墓に植えるハシバミの小枝であった。そのハシバミの小枝は成長して立派
な樹木になると奇跡を起こし、シンデレラを助けるようになるのである。
ハシバミの枝は英知の象徴とされ、そのため昔からシンボルマークにも使われている。
医療関係では,1匹の蛇が巻き付いた杖があり、これは古代ギリシャの医術・医学の神アスクレピオスの杖と思われる。世界保健機関(WHO)や、多くの国で救急のシンボルにも採用されている。金融や商業関係では、杖に二匹の蛇が絡まる「ヘルメスの杖」がある。三越百貨店や、一
橋大学の校章に使われている。
ハシバミの枝は占い棒にもなった。特に中世以降は鉱脈・水脈を見つける占いである、ダウジング に利用され、現在でもつづいている。
- 学名
- Corylus heterophylla
- 科
- かばのき科
- 属
- ハシバミ属
- 英名
- Japanese Hazel
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