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新・木偏百樹

あこう

別名は、雀榕(アコウ)、大葉榕樹(オオバヨウジュ)、赤秀(アコウ)、榕(ヨウ)、アコギ、ジンコゥボク、タコノキなどと呼ばれる。和歌山県、山口県、沖縄、、台湾、中国南部からジャワに分布する。常緑樹であるが、春に新芽が出る前に一時的に落葉し裸の木になる。高さ20m、幹の直径約1mにもなり、四方に枝を広げる。小枝は傷つけると乳白色で粘質の液が出る。幹や枝から気根を垂らす。防潮、防風用として人家の周りに植えられる。 あこうと同じ仲間のガジュマルも気根を垂らす巨大な常緑樹である。このふたつの木は、葉の大きさや葉柄の長さで見分けることができる。バリ島、フィリピン、シンガポール、マレーシア、タイやオーストラリアのケアンズでも見ることができた。タイでは観光案内にでてくるアユタヤユ遺跡で石彫の仏像の顔を巻き込んだガジュマルを見た。より有名なものにカンボジアの『タ・プローム寺院』の樹がある。鉛が溶けて落ちたように城壁にまとわりついている姿は有名である。まだ訪問したことがないが、必ず訪問したいと思っている。日本では沖縄県に多く。同県の巨木の20位以内はほとんどガジュマルで占めている。 アコウとガジュマルは果実が鳥などに食べられ、他の樹の枝で種子が発芽し、それにからみつき、気根を多数垂れ下げ、次第にもとの樹にまとわりついて、 絞め殺し(枯らし)して、自分がその場所を乗っ取り、元からそこで育ったような顔をして大木となるのである。そのため絞殺木(こうさつぼく)と言われ、森の殺し屋グループである。20mにもなる高木が、他人の木で大きくなるということは、日本のほかの木ではまったく見られな い。
アコウの材は挽物細工に使用されるが、耐久性などがなく、これといった特長もないことから一般に有用樹ではない。 榕樹(ヨウジュ)という言葉は小説では芥川龍之介の「俊寛」(しゅんかん)や林芙美子の「浮雲」にでてくるが、「俊寛」には「アコウ」のフリガナがあり、「浮雲」には「ヨウジュ」となっている。前者は沖縄であり後者は屋久島で、場所と文脈かから判断すると樹木は各々「アコウ」と「ガジュマル」と思われるが、榕樹にアコウを当てるのは誤りだと思う。
また、大阪中央区にあるアメリカ村というと、若者に人気のある地区で有名だが、本家本元は父の故郷和歌山県御坊市の隣にある全村アメリカ国籍を持つ人々 が住む村がそうである。子供の頃夏休みに祖母に連れられてバスで何度か遊びに行った。このアメリカ村の入り口、美浜町三尾の海岸近くに龍王神社があり、 そこに和歌山県の天然記念物に指定されている大きな「アコウ」の木がある。周囲はイブキ、モチノキ、ホルトノキなどが茂り、神社社叢として町の天然記念物に指定されている。数年前に私の趣味の巨樹めぐりでもここをたずねたことがある。蛇が巻き付いたような異様な形に圧倒される樹齢350年の立派な「 アコウ」の木であった。アコウの日本での北限がちょうどこのあたりである。 果実は枝や幹に群がってつくのが特徴でもあるが、父は小さい果実を「ようのみ」と呼び、子供の頃はめずらしがって食べたそうである。
学名
Ficus superba
くわ科
イチジク属
英名
large-leaved banyan

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