きり
白桐(シロギリ)、花桐(ハナギリ)、一葉草(ヒトハグサ)、ヒトハグワとも呼ばれる。
貝原益軒の大和本草 に「切れば早く長ず、故にキリという」と書かれているが、これは植えてから1年-
3年の間に、台切りといって、幹を根元近くで切り、萌芽が勢いよく伸びて来るのを育てると、成長がいっそう早くなることからである。また、木目(木理)が美しいためとの説もある。
花は大きくて美しく、香りはうっすらと上品である。
落ちた花に蟻がたかっているのところから、蜜があるようだ。
高さ15m、直径50cmにもなる。種子は白色の膜翼があり、非常に軽く、息がかかれば飛散するほど。このため種は相当の遠くまで飛んでいくと思われる。古
くから有用材であったので、早く伐採されてしまい、今、静かなブームの巨樹や名木は残念ながらない。
葉は6-20cmもある長い葉柄で、大きさも10-20cmもあって、日本の樹で最も葉が大きいもののひとつである。
ことに若木では異常に幅広く大きくなって、幅が94cmという記録がある。
キリは古くから木材を目的として植栽されてきた。岩手県の南部桐、福島県の会津桐は有名だが、南部桐は柔らかく、福島県の会津桐は堅い目だが山形
の桐はその中間。
原産は竹島か、中国揚子江流域か、日本の隠岐島等、諸説がある。
昔から炭焼き釜の跡にキリを植える習慣があった。また各地方で女児が誕生するとキリを植え、嫁がせるときに切り倒してタンスなどの家具調度品に用意
する習慣があり、それなりの需要やビジネスもあったが、現在は変わってきた。国内生産量は1960年頃から急速に減少し、現在では日本の使用量の90%は
中国、台湾、北米、ブラジルなどから輸入されいる。
徳川時代は禁木として、保護を加えた藩もあった。
またいちょうとともに立ち木として防火用に役に立つというので、屋敷の周囲に植えた。江戸の町にはあちこちに火除地(ひよけち
)という空き地を設け、火災の避難地や火の中断地とした。火除地にキリを植えたのも、防火とあとの用材利用の一石二鳥をねらったものであ
ろう。
花札は江戸庶民が考えた花かるたで1月の松から12月の桐まで季節の植物を配置している。桐の花は6月、落葉が10月なのに12月とはおかしいが、
ピンからキリまでの「きり」に江戸っ子はしゃれたのだろう。
含水率の変化による収縮率、膨張率は国産材で最小である。>熱伝導率の値も小さく燃え難い。また比重0.3と国内でもっとも軽い。湿気を吸わず通さない
上、柔らかで、のり付が良く、年輪がはっきりして、辺材、心材の区別なく木目の光沢が良い。いわゆる絹糸光沢である。このような性質から、多方面に利用
された。箪笥(たんす)長持(ながもち)、机などの家具材、火鉢、漆器木地、欄間(らんま)、障子の枠、組子、腰板、襖(ふすま)の骨、落掛(おとしがけ)、仏壇、金庫内箱、菓子箱、美術館関係の箱、琴、越前琵琶の腹板などの楽器材、下駄、羽子板、祭りの獅子頭、仮面などの彫刻材。
名刺や熨斗袋などに利用する桐紙、日本人形の練心(ねりしん)、釣りの浮子(うき)などもある。
また桐灰は粒子が細かいので、研摩用、絵画用木炭、女性の眉墨(まゆずみ)、火薬などに使われる。
- 学名
- Paulownia tomentosa
- 科
- ゴマノハグサ科またはノウゼンカズラ科
- 属
- キリ属
- 英名
- Paulonia、Royal Paulonia
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