このページの制作者は、かつてから「日本は木の国」「日本人は木が好きだ」「日本は木の使い方が上手だ」という言説に対して疑問を抱いています。というのも、ヨーロッパやアメリカ、カナダ、オーストラリアなどを旅行する際、特に屋外において、日本とは異なり、木材が多用されているのを目にするからです。これらの国々では、木材のデザインが優れているだけでなく、耐久性も考慮されているのです。
日本では、古来から木材を利用して神社などが建設され、定期的な造り替えが行われてきました。また、雨が当たる部分には腐りにくい工夫が施されています。これらの知恵は、現在でも神社の改修工事などで受け継がれていますが、一般的な建築物にはあまり活かされていません。このページで紹介しているような事例を見ると、海外の方が木材の利用についてよく考えられていると感じます。これらは物理的な側面ですが、もう一つ、感性的な側面もあります。
海外では、視覚的に目に見える部分に木材が多用されています。
コストや強度の問題で他の素材が使われる場合でも、直接触れる場所には可能な限り木材を使おうとする意識が感じられます。そのため、目に優しく感じられるのです。これに対して日本では、感性的な要素がほとんど考慮されず、メーカーの営業力によってアルミやプラスチック系の素材が多く使用されています。特に、木材とプラスチックを混合した人工木材が急速に普及しており、一見すると本物の木材と見間違うようなものもあります。しかし、多大なエネルギーをかけて木に似せるよりも、そのままの木を利用する方が、合理的で感性的にも良いと思います。
建築基準法の改正により、日本でも建築・建設分野で木材の使用が増加しています。これは非常に素晴らしいことですが、屋外での木材の使い方に関しては、まだ日本は物理的な面と感性的な面の両方で遅れをとっていると思います。このページが、設計や施工の関係者に少しでも影響を与えることができれば幸いです。
中川勝弘