法隆寺の五重塔
・朝日新聞 2008/11/25
世界最古の木造建築として知られる現在の法隆寺は、聖徳太子創建の金堂や塔が消失したあと、7世紀後半から8世紀初めに再建されたもの。屋根の上の装飾「相輪」の先まで34.1mある五重塔は、ひのきの心柱が中央を貫いている。年輪の測定によれば594年に伐採されたらしい。この年は、太子が推古天皇の摂政になった翌年だ。心柱にできる巨木は樹齢1000年以上。お釈迦様が生きていた時代の木を太子が切らせ、後にその木を使って再建された塔が現在に立っていることになる。1300年前の当時は窓の格子が緑青の青、柱は丹の赤、相輪は金色に輝いていたという。五重塔が作られた白鳳時代の様式の塔は下にいくほど屋根が大きく安定感があり、この時代に特有な肘木(柱の上で棟を支える横木)にも素朴な力強さがある。「法隆寺の七不思議」の一つに「塔の相輪の4本の鎌」がある。確かに鎌が4本、相輪の根元近くに差してあるように見える。「落ちてきた雷を大鎌で引っ掛けて塔の横に落とす」と言い伝えられているそうだ。古代の雷よけだろうか、こんな鎌があるのはこの塔だけらしい。塔にとっては雷は最大の敵、670年に初代法隆寺が消失したのは、雷が原因だったと「日本書紀」にある。現在の心柱にも13世紀の落雷のこげ跡が残る。実はこの落雷のあと、各層の壁に雷よけの木札「避雷符」が打ち付けられた。以来、被害の記録はないと言うから、御利益はあるのかもしれない。もちろん今は避雷針が取り付けられている。古代・中世・現代の「雷よけ」に守られ、五重塔は長寿記録を更新中だ。