「ナラ枯れ」被害
・読売新聞 2008/9/1
夏の終わるころに起こる「ナラ枯れ」。近年、山林の樹木がナラ枯れしやすい樹齢に達していることもあり、全国で被害が深刻化している。「ナラ枯れ」はコナラなど、ドングリをつける広葉樹が病原性のカビに感染し、枯れるもので、大きな原因は、カシノナガキクイムシ(カシナガ 体長5ミリ)という甲虫が病原性のカビを媒介していることである。カシナガのメスの背中には、ナラ枯れを引き起こす「ラファエレア・クエルキボ-ラ」という病原性のカビの胞子が納まり、木の内部に運ばれて、繁殖する。カシナガのメスとオスは協力し、いくつもの、細い通路を作り、メスが木の内部に卵を産みつける。その為、木の内部で卵からかえり、成虫が通路から外に巣立った際に、巣立つメスの背中のくぼみに胞子が入る。これの繰り返しにより、「ナラ枯れ」は拡大するのである。また、ナラ枯れは、1930年代に、宮崎・鹿児島両県で確認されたと残っており、林野庁の調査では、ナラ枯れによる全国被害面積は1996~2002年度は年間270~400ヘクタールで、2003年と2004年は4桁を超えた。カシナガは老いて枯れゆく木の方が繁殖しやすいといわれれ、被害は樹齢40~70年の老木に多いことがわかっている。ナラ枯れにより、景観損失や森林機能の損失に繋がる恐れがあるとも指摘されている。被害拡大防止のため、事態を重く見た林野庁では今年度から、3年間ナラ枯れの発生危険度を予測する手法の開発に取り組み始めた。さらに、山形・長野・島根などの各県では、人工フェロモンでカシナガを誘き寄せて駆除する実験も始まっている。独立行政法人森林総合研究所関西支所の衣浦研究員は「山歩きなどで『ナラ枯れかも』という木を見つけたら関係機関に通報してほしい。早期の発見と対策が何よりも大切。」と呼びかけている。