温暖化STOPで山林荒廃止まるか
・毎日新聞 2008/8/28
林野庁調査によると、森林の4割を超える人工林、1140万ヘクタールのうち、間伐を必要としている面積は530万ヘクタールと半数近くにまでのぼるという。従来の間伐実績は年間35万ヘクタールベースのため、人工林り成長を停止させたとしても間伐の滞りを解消するには15年はかかることとなる。
また、、間伐材を搬出し販売する「利用間伐」は3割にとどまり、7割が「切り捨て間伐」である。放置された木は後の整備や山火事の消火作業の障害にもなる。この間伐が滞る背景として、都道府県が作成する森林調査簿の未整備問題を指摘する林業家は多い。最近では、親の代で林業をやめ、林地の相続人が複数になると、所有者が全国規模に分散するケースが増えているため、間伐コストを下げられないこととなっている。つまり、間伐コストを下げるために、間伐が必要な林地を集約する共同間伐や、間伐用の林道整備が考えられるが、所有者一人一人の許可を求めて全国を回る、気の遠くなる作業を強いられることとなるからである。
森林は、木材生産のほか、雨水を蓄える水源かん養、表土流出の災害防止、騒音緩和や二酸化炭素の吸収などさまざまな機能(公益的機能)を持っている。この森林の機能をすべて金額に換算すると、67兆7831億円となり、生産額の約140倍の価値である。林野庁は「森林整備の遅れを一気に解消したい」と意気込むが、330万ヘクタールの間伐計画は、従来の間伐実績の1.5倍を越える量をこなさなければならないのである。
今、間伐が本格化する情勢だが、切り捨て間伐が7割を占める現状では、間伐が一気に展開されたら山に丸木がたまっていくばかりとなる。そしていずれ二酸化炭素を放出することになる。そこで、間伐の実施・搬出に支障となっている運搬費問題を解決させようと、ビジネスモデルまで登場してきている。ひとつの例として、紙流通業の市瀬は、間伐材をチップ工場まで運ぶ運搬費用を企業に負担してもらい、工場は間伐材代金を森林所有者に払う。その後、チップは紙にされ、市瀬を通じて運搬費を肩代わりした企業に通常価格で販売される。企業は購入した紙を、自社のパンフレットなどに活用できるとともに、環境貢献をPRできるというわけである。森林所有者も運搬費を負担しなくてすみ、間伐材収入を元手に森林整備を行える。また、企業やNPO法人が自治体と期限付きで協定を結び、間伐や植林を実施する「企業の森」も広がっている。企業などは一定区画の森の間伐・植林費用を負担する代わりに、社内の間伐・植林イベントや社員のレクリエーション活動に活用できるなど様々な試みがされている。