被爆クスノキ
・朝日新聞 2008/8/8
原爆から今月9日で63年。長崎市内にある、爆心地から約800mに位置する山王神社には、高さ20m樹齢500年と言われる「被爆クスノキ」が2本ある。このクスノキが生き延びたこと自体が奇跡的なことである。地表温度は爆心地で3000-4000度と推定される。1969年に市の天然記念物に指定されたが、1995年“葉が黄色っぽい”“シロアリがいる”“原爆で焼けた一部は腐っている”被爆クスノキの異常に気付いた神社から依頼を受け、造園業で樹木医の松田氏(84歳)が手当てを始めた。松田氏自身も原爆を経験している。松田氏は同じく造園業だった父からもらった言葉「植物はものをいわないから優しく接しなければならない。木のこころを汲み取る人間になってくれ。」その言葉を胸に松田氏は「今、何を言いたいのだろう。」と耳を澄まし、被爆クスノキの土に酸素を送り込んだり、肥料を与えたり、腐った部分を切った。現在、被爆クスノキは、多くの人の活動により日本にとどまらず、世界に種が広がった。また、苗木は、兵庫の小学校に原爆の話と共に子供達に送るなど、日本全国に広がった。松田氏は2年ほど前に狭心症の治療を受け、「私はいつどうなるかわかりません。でもクスノキは、大切にすればもっともっと生きることができます。後の世代に残さなければなりません。」と話す。クスノキは2年前から別の樹木医によって世話されている。