立ち木トラスト
・毎日新聞 2008/6/30
優美な景観を描き、多様な生態系をはぐくむ瀬戸内海では、戦後都市開発に土砂を提供し、工業地域が引き起こす公害を受け、この海は日本社会の移ろいを映す鏡となつている。ゴルフ場やリゾート地の開発は地下水を汚し結局、海も汚すことになり、沿岸の環境団体は反対運動を繰り広げ、1990年6月に「環瀬戸内海会議」が結成された。瀬戸内海全体を守るには連携する必要があったのである。1990年代前半には、ゴルフ場建設予定地の樹木を買い取る「立ち木トラスト」を仕掛け、沿岸を中心に8件24ヶ所で建設計画を中止に追い込んだ。1994年ごろから、産廃処分場の計画が増え、処分場は当時、設置手続きが簡素で、資金集めに時間がかかるトラスト活動では建設をとめることができなかった。そこで事前に資金を集め、判明した計画にすぐ投入する「立ち木バンク」方式を編み出し対抗した。約60トンもの有害廃棄物が都市から持ち込まれた香川県・豊島の不法投棄事件でも、1996年に住民の支援に乗り出した。「未来の森トラスト」運動をし、豊島の気候に合わせたオリーブやカリンなど約1500本を植樹した。10年余が過ぎ、木々は森へと育ち始め、ここ数年は「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正を求める署名活動を続けている。