ウタキ祭り
・日本経済新聞 2008/5/27
宮古島の北部に狩俣という集落があり、集落の背後が原生林である。そこで毎年冬におこなわれる祖神祭が行われていた。山ごもりした神女たちが、木の葉の冠をかぶり、はだしで降りてくるのである。宮古島には狩俣以外の集落でも、貴重な祭りがウタキ(樹々でかこまれた只の空間のこと)を中心に守りつがれているのである。そしてウタキは神祭りの大切な場所とされていた。しかし、沖縄県宮古支庁農林水産課のまとめたところでは1972年7800ヘクタールであった宮古諸島の森林面積は、それから約20年たった93年には、3600ヘクタールに減少した。そして、このままでは宮古のウタキは消滅するという危機感から、宮古の神と森を守るため、1994年の11月23日に、平良市で「宮古島の神と森を考える会」が発足し、ウタキの祭祀を守るにはどうすればよいかという切実な問題をめぐって、討論をつづけてきたが、ウタキの神祭りに奉仕する神女は、高齢化のために年々減少し、そのために祭祀をつづけることが困難になり、何百年もつづいた貴重な灯が消えたのである。