朱森と生きる人間の力
・日本経済新聞 2008/5/15
1980年代、「故郷ウェールズの荒廃した炭鉱地帯が地元人々の自然再生により、緑豊かになったように、日本の放置された森林を草木が生い茂るようにしたい。」この思いから、ウェールズ出身の作家C・W・ニコル氏は、自宅近くの荒廃の再生からはじまり、2002年にアファンの森財団を設立するまでとなった。ニコル氏は言う。「日本はどこの町にも、近くに海・森・川がある。北の知床~南の西表まで、これほど多様性に富んだ美しい森を持つ国は他にない。」と。ニコル氏自身は、22才で来日し、今の居の地となり、日本国籍をとるきっかけとなった、長野県黒姫のブナの原生林に魅せられたという。しかし、戦後から、度重なる原生林の伐採や川のコンクリート化、湿地の埋め立てにより、森林は荒んでいった。「役所や一部の山林所有者が自然破壊に対し、無頓着だから。」ニコル氏はこう指摘する。現在、アファンの森財団の土地は20ヘクタール。ニコル氏は「自治体などには、あきらめない主張と行動が大切。そして、森づくりは、次代と繋がる思想が木々と向き合う作業を楽しくするのだ。」と教えてくれた。我々にとって、森林は癒しであり、時に木に魂や力を感じ人間に元気や力を与えてくれる大切なもの。だからこそ、これから、我々は、自然と向き合い、森と生きていくべきなのであろう。