大阪の街路樹
・日本経済新聞 2007/11/12
大阪市旭区の太子橋中公園の園内に60本のイチョウがある。このイチョウは大阪の御堂筋並木「イチョウ」になりそびれたものである。公園として整理される1963年までこの場所は苗圃であった。御堂筋のイチョウは埼玉県から取り寄せ、大阪の土地にになじませるためにここで育てられた。また、枯れたりした場合の補充用でもあった。御堂筋の街路樹の種類を決める際、市役所内ではプラタナス派とイチョウ派に分かれ大論争になった。その結果、梅田から大江橋間はプラタナス、淀屋橋以南はイチョウとなった。大阪市立大の嘉名教授は折衷案以上のあるという。当時の計画では、大江橋以北は官庁街として整備する「シビックセンター」構想があり、西洋的な街並みを目指していたので、それに似合うプラタナスであったという。それに対して船場という近世からの街の特性を考え、日本的なイチョウを選んだのではないかという。中之島地区には植樹帯がなく、川の風景を楽しませるというような配慮があったのではと・・・。思い描いた街並みを街路樹で特徴づける。美観づくりの陰に巧みな計算が見え隠れする。