皇居の貴重な動植物
・日本経済新聞 2007/9/9
総面積115ヘクタールにスダジイ、クスノキ、イロハカエデ、ヤマザクラ、クロマツなど緑の島、皇居である。環境省2006年8月に観測したところ、皇居内は市街地と比べ気温が2度低いという。これは樹木の水分が蒸発して空気を冷やすためである。皇居は3つの区分に分けられるが、最も自然豊かなのが御所のある吹上地区である。1996年から5年間かけて国立科学博物館が吹上御苑を中心とした58ヘクタールを調査した結果、1366種の植物、3638種の動物の生息が確認された。門田室長は「皇居の森は武蔵野の面影を残すとよくいわれるが、それは誤解。むしろ海岸近くに多い照葉樹の森」と説明する。この地区は江戸時代に森林が伐採され、武家屋敷が置かれた後、庭園になるなど様相は変遷。つまり手付かずの自然林を維持してきているのではない。戦前、御苑内にあったゴルフ場廃止の際、自然のままという昭和天皇の意向に基づき、現在の姿がある。宮内庁庭園第一川上係長は「自然にしておくということとほってらかしにしておくことは違う。自然に近い形でコントロールしなければならない」と話す。貴重な植物を伐採しないように草刈は手作業が多く、作業中は植物見本を手にしているという。