森の生態系
・日本経済
新聞 2007/5/27
水辺は森の生き物の宝庫である。うっそうとした森とは違い日当たりなどの環境条件が異なるため、さまざまな植物が育つ。落ち葉や倒木がつくるよどみは魚の住処となり、その魚や水生昆虫を狙って野鳥や動物が集るのだ。この水辺を再生させるためのプロジェクトとして群馬県・新潟県境にある赤谷川で日本では前例がない「ダムを撤去する」という計画されている。赤谷川支流の茂倉沢には昭和20年代-30年代に17基のダムが造られ、土石流の防止などに役立ってきたが、老朽化で役割を果たさなくなったダムの中央を撤去し、魚が往来できるように改修するのだ。日本の森林は戦後の復興期に奥山まで自然林が伐採され、その後に針葉樹が造林され、森林伐採で生じる土砂に対応するため治山ダムが多数造られ、水辺の環境が激変した。森全体に比べて水辺林は面積的狭いが、周辺の森に住む野鳥や鹿など動物の約7割が水辺を利用し、生態系には重要なものである。水辺林が本来の姿を取り戻すには100年以上はかかる。しかし、社会が森林に求める価値も時代とともに代わり、今は自然の豊かさを含めた総合的な価値が求められるようになってきた。赤谷のプロジェクトはこの流れの表れともいえる。