木材流通に電子タグ
・読売新聞 2007/2/8
電子タグはIC(集積回路)チップと情報を電波にのせて送受信する超小型アンテナを搭載した荷札(タグ)で、1辺が1mm以下の小さなチップに入力された情報はバーコード形式に比べ大量で高速処理できる。また、情報の書き換えも専用機器により簡単に行えるといった特徴がある。兵庫県中西郡宍粟市は、この電子タグを使って木材の流通を高度化する取り組みを進めている。ねらいは宍粟市産木材の付加価値を高めること。消費者の住宅の安全性に対する関心が高まる現状、電子タグを使うことによりトレーサビリティー(履歴追跡)を可能にすることで、産地や品質に関する情報を明確にすることができる。システム作りに取り組んでいるのは同市の林業関係者でつくる協同組合「しそうの森の木」(三渡啓介代表理事)で、東京大学生産技術研究所や東京都内のコンサルティング会社と共同で一昨年秋、約50本の木材に電子タグを取付けて効果を調べる実証実験を行った。実験には森林所有者や伐採業者、製材所、建設業者が参加した。木の切り出し段階で木材の産地や強度といった品質に関しての情報をコイン型の電子タグ書き込み、これを木材に埋め込み、流通過程の各段階でも情報を追加、住宅の建築現場に運び上等までを追跡した。参加者は電子タグのデータをネットで共有でき、流通過程のどこに、どの品質の木材がどれだけあるかをリアムタイムで把握できたという。昨年には、この方式で流通した木材を兵庫県営住宅約20棟で使用するなど、システムの実用化に力を入れた。今後、「安心、安全の木材」としてブランド化を図り、販路を拡大することで事業を軌道に乗せていきたいとしている。また、三渡代表理事は「持続可能な森林経営をするための新しいビジネスモデルを築くことによって、地元産業の活性化につなげたい。洪水の防止など森林機能の再活性化にもつなげることが期待できる」と話す。