屋久島の「紀元杉」
・読売新聞 2007/2/4
屋久島は九州最南端大隅半島・佐多岬沖60キロに位置し、島の周囲は130キロ。沿岸部はマングローブが茂る亜熱帯の気候だが、島の中央には九州最高峰の宮之浦岳(1936メートル)など「洋上のアルプス」と呼ばれる山々が連なり、冬、山頂には雪も積もる。降水量は年平均4500ミリ前後と鹿児島市の2倍あり、ヤマモモやサクラツツジなど広葉樹が茂る森林や杉の樹林帯と自然豊かな島である。屋久島では樹齢1000年以上の杉のみを屋久杉と呼ぶが、「紀元杉」は屋久杉の中の屋久杉である。幹の周囲は8.1メートルあるが、先端は枯れたように細くなり、高さは19.5メートルと意外と低い印象をもつ。根本は厚いコケに覆われ、風が吹き抜けるとコケが震えるように揺れる。沢の音だけが響く、静寂の世界。樹皮を照らす陽の光は刻一刻とその明るさを変える。変化に富む豊かな島である。