都市にみどり
・毎日新
聞2006/12/20
大都市の真ん中でネクタイ姿の男性や会社の制服を着た女性がサツマイモの収穫を楽しんだ。ここは東京都港区にある8階建てのオフィスビルの屋上だ。都市部で「島状」に気温の高い部分ができる。ヒートアイランド現象だ。このヒートアイランド現象の対策としてNTTファシリティーズとNTT都市開発が屋上緑化の実験として取り組んだ。サツマイモの栽培は土をほとんど使わずにすみ、葉も大きいという点が挙げられる。今回の収穫はその副産物だった。近年、屋上緑化は増えてきている。東京都では01年に条例で一定規模以上の新築ビルなどに対して義務図けるなど、急速に普及し始めた。屋上緑化は憩いの場になるだけでなく、植物からの水分蒸発によって気温上昇が緩和され、ヒートアイランド対策にもなる。地面に植物を植える余裕のない都市部では緑を増やす現実的な方法だ。緑化は屋上だけにはとどまらず、壁や路面電車の軌道と広がっている。壁面緑化は05年の愛・地球博の巨大な緑化壁「バイオラング」で注目を集めた。また、路面電車の軌道は鹿児島市内を走る市電の軌道周辺に芝生が植えられる。工事は来年1月中旬から始められるのだが、鹿児島中央駅-鹿児島駅間の2.8キロと路面電車では全国最長の芝生軌道敷になるという。和歌山大システム工学環境システム学科の山田宏之助教授(都市緑化)は「今後は民家の屋上にも広まるのではないか」と指摘する。