「都市の緑」は増加傾向
・毎日新
聞2006/11/14
平地が少ない日本にとって都市は緑化の「ラスト・フロンティア」である。大阪市浪速区のなんばパークス、さいたま市中央区のけやきひろばといった都市の緑は地球温暖化やヒートアイランド対策としても見直されている。なんばパークスは南海ホークス(現福岡ソフトバンクホークス)の本拠地だった大阪球場の跡地に03年10月に開業した。今の季節は赤やピンクのコスモスが咲いていて、小川が涼しげな音を立てて流れてるなか、樹木の緑に囲まれ若いカップルや親子連れ、会社員などがくつろぐ。同施設は地上9階建てで、全体を小高い丘のように設計し、屋上部分の基盤を棚田状にした。約8000m2の屋上には四季を通じてヤマボウシやハナミズキ、バラやローズマリーなど合計約235種、約4万株の樹木や草花が植栽されている。同パークス営業部マネージャーの小森克尚さんは「緑が少ない大阪を潤す杜にしたい。環境に配慮することは時代の流れで見ていて飽きさせない大規模の屋上緑化で、集客層につなげていきたい」と意気込みを話す。一方、けやきひろばは地上約7メートルの人工地盤上に約220本のケヤキを植樹した約1ヘクタールの人工林だ。下には飲食店などのショッピング街があり、周囲は高層ビルやさいたまスーパーアリーナに囲まれている。当初平均約8メートルのケヤキを長い期間をかけて12メートル前後に抑えることを目指し成長を管理していたのだが、完成から7年目、早くも大きくなりすぎた樹木が出始めた。このままでは12メートルを前提にした森と周囲との建物とのバランスが崩れてしまう。管理するさいたまアリーナ施設課ではかん水の頻度を昨年から冬季は6日ごとに2時間ずつ減らす処置を取っているが「人工地盤上でこの規模の植林は前例がないようだ。実験しながら管理しているようなもの」と話す。全国の都市部で「緑」を売り物にした再開発ラッシュが続くが、可能になったのは人工土壌や自動かん水といったシステム、排水技術などがあり、ここ10~15年で飛躍的に進化した。屋上緑化に力を入れる東邦レオ(本社大阪市中央区)の熊原淳テクノロジーレポート編集委員長は「軽量の土壌や、根が建物を傷めないようにする『耐根シート』の開発が大きかった」と指摘する。国は通称「景観緑三法」を整備しおり、東京都でも23区の緑化率00年の29%を25年には2割増やす数値目標を掲げている。