建築の原型
・朝日新聞 2006/11/5
伊勢にある御塩殿神社とは、伊勢神宮に供える塩を作るための施設が、神社となって今にある。切り妻の屋根を地面に伏せたような単純な形である。江戸時代の棟梁たちはこの御塩殿のような形の建物が建築の始まりだと考えていたらしい。日本ではじめての建築の通史をまとめた伊藤忠太は、この形を「天地根元造」呼んでいる。しかし、現在では、原始的住居の復元が行われる場合、竪穴式住居と呼ばれる建物が復元的につくられることが多い。「天地根元造」という形式は原始住居としては否定されてしまっている。なぜなら洗練されすぎた造形だとみなされたからである。