木を無駄にしない三尊像
・日本経済新聞 2006/10/22
岐阜県関市の高賀神社に伝わる円空仏、この仏像をみると、これが仏像か・・・とそんな驚きを覚えるという。通常仏像といえば、美しく均整のとれた姿形を連想するが、これは対照的に荒々しい造形であり、鑿(ノミ)の堀跡が生々しくある。円空といえば、1632-1695年の生涯に12万体の仏像を彫ったといわれる天台宗の僧侶である。高賀神社にある3体「十一面観音菩薩立像」高さ2.2メートルを中央に両脇に「善女龍王立像」と「善財童子立像」であり、この各像の顔が彫られた前面を内側にして3体を寄せると、1本の丸太の形に復元できる。ということは、1本の丸太を素材に3体をつくっているということである。これは木の質や年輪を検証した結果からも裏づけがとられた。このほかにも円空が1本の丸太から複数の像を掘り出した例がある。これは霊が宿ると考えられていた木を無駄にしない求道者の姿勢のあらわれといえるだろう。