バイオ燃料への期待
・日本経済新聞 2006/8/17
京都議定書で、日本は2008年~2012年平均で1990年と比較し、温暖化ガスを6パーセント減らすと公約したが、2004年の時点で1990年よりも8パーセント増しており、自動車利用など運輸部門は20パーセントも増している。そこで植物成分からつくる「バイオ燃料」が、石油燃料の代替品として注目を集めている。代表的なものにサトウキビやトウモロコシを発酵させたバイオエタノールと廃食油などから作るバイオディーゼルがある。京都議定書によると、バイオ燃料は原料となる植物が二酸化炭素を吸収するため、消費しても二酸化炭素排出量がゼロとみなされる事から「二酸化炭素削減の切り札」として期待が集まっている。アメリカやブラジルなどのサトウキビやトウモロコシを大量に生産する国では、バイオエタノールが急速に普及している。ガソリンに数パーセント混入して使用する場合なら自動車を改造しなくても利用できる事から、主にガソリンにそのまま混ぜて使用しているが、アメリカでは純度85パーセント、ブラジルでは純度100パーセントのバイオエタノール燃料も売られている。2005年まででアメリカ内のバイオエタノールの販売量はまだガソリンの3パーセント弱だが、今年は1.5倍に増える見通しである。バイオエタノール施設は日本でも増えており、沖縄産サトウキビを使ったエタノール生産の試験をアサヒビールが開始。また廃材からエタノールを作る施設を大成建設、丸紅が大阪で来年から稼働する。宮城県塩釜市の水産工場団地では特産の「揚げかまぼこ」の廃食油を使い、バイオディーゼルを作る工場の試運転を始める。販売価格は1リットルあたり80円程度におさめられ、宮城県内の軽油価格120円よりも割安である。日本政府もバイオ燃料の利用拡大をエネルギー政策の基本方針に掲げているが、バイオディーゼルは国内の廃食油をすべて集めても国内で使う軽油の三日分しか作れないため、普及するのには時間がかかりそうだ。バイオエタノールは輸入に頼るほかないが、現在の輸出国はブラジルに限られ、ブラジルの内需は2010年までに7割増えると見られ、天候不順の影響を受ける可能性などもあることから、安定供給面に不安が残る。また、ガソリンと混合したバイオエタノールは水が入ると分離しやすく、品質面の課題もあげられている。