森を自らの手で守ろう
・産経新聞 2006/8/8
紀ノ川・吉野川の源流に位置する川上村は吉野林業の中心として知られ、豊かな自然に囲まれた村は自然との闘いも強いられた。昭和34年、流域に大被害をもたらした伊勢湾台風がきっかけとなり、下流域の安全を守るため、ダムの建設が計画された。昭和56年よりダムの建設が始まり、木材の不況も重なり水没などで移転が決まった500戸のうち、残ったのは100戸。人口は8000人から2000人に激減し過疎化が進んだ。かつて、吉野杉1本売ればクラウンが1台買えるという好景気を経験した村も変質を求められ、「下流にはいつも綺麗な水を流す」「自然と一体となった産業をはぐくむ」いわば、源流の村として生きていく「川上宣言」を10年前に宣言し、水源地の保護を決めた。そして7年前より手付かずの原生林が残る約750ヘクタールを4年がかりで村が買収した。村を自分達の手で守り、源流から学ぶ「源流学」を提唱する拠点として源流館もオープンし、原生林の動植物の生態調査も開始した。原生林には松によく似たトガサワラという氷河期を生き抜いた珍種も存在する。化石でしか知られていなかったトガサワラが残っていたのは原生林だからといえる。