吉野の割り箸
・産経新聞 2006/8/5
吉野杉を使った高級割り箸として知られる吉野箸の産地、奈良県下市町は吉野川下流にある。下市町では、街の8割を占める森林資源を活用した木工業が盛んである。町内の製箸業者は50ほどで、組合長をつとめる鍵本智さんは「うちの主力はスギ柾天ソゲで、天ソゲは端が斜めにそいである。生産量は多いときは一日1万膳はいったが、今は1日7000膳と減っている」と語った。割り箸作りは機械と手作業を駆使した地道な作業で、1膳10円(卸値)の仕事である。昨年来、割り箸の国内需要の9割以上をまかなう中国産が森林保護や原燃料価格の上昇などを理由に、日本向けの大幅値上げ、輸出制限を打ち出した。これは国産にとっては千載一遇のチャンスとも言えるが、かつて国内需要を支えた北海道産は低価格競争に敗れ壊滅状態である。また高級品主体の吉野産は命脈を保ってきたが、建築不況で吉野杉も端材がでないので材料不足であり、人手も足りない状態である。流通業者などで作る吉野杉箸商工業組合の大月徳昭理事長は、「中国がだめならと、ロシアやベトナムなど新しい輸入先を模索する動きも盛んになっている。その中で私達はどう動くのか考えなければならない。」と語った。