ロシア行政の腐敗
・読売新聞 2006/8/2
昨年政府が導入した人工衛星と航空機を使った違法伐採モニタリング調査について、モスクワの天然資源省森林局はその成果について詳しく説明してくれた。許可地を大きくはみ出した違法伐採を示す航空写真はインターネットでも公開されている。しかし現場のイルクーツク州森林局の話では航空写真が違法と示した場所はすべて許可区域内で、問題となっているのは、細かな規則違反だけであると言う。日本の林野庁によると、昨年までロシア政府は、違法伐採といっても手続きの間違いなどによるもので、伐採量全体の1パーセント程度であると繰り返してきた。しかし「昨年ロシアで切り出された1億8400万立方メートルのうち違法に伐採されたものは10パーセントにのぼる」と森林局長代理のミハイル・ギリヤエフは明言した。このように政府上層部の姿勢は大きく変わってきている。しかし地方の役人はいまだに違法伐採の存在を否定し続けている。ロシアではここ数年で森林をめぐる行政は大きく改変され、流通監視業務や伐採の適否は、同じ天然資源省内の森林局から自然利用監督局に移され、営林署の検査官は激減し、沿海地方では、3つの営林署で2人という手薄な体制になるなど、成果よりも混乱を呼んでいる。また森林法が来年改正され、地方政府への森林管理の移管が予定されているが、行政内部からも方向性がまったく見えないなどの声が上がっている。司直による違法伐採の摘発の強化にも、違法伐採に携わる業者は警察、行政とも繋がりが深く取り締まりの網を逃れるなどの声が上がり、冷めた目が向けられている。