大工塾
・日本経済新聞 2006/7/24
深刻な大工不足対策として、2003年国土交通省の外郭団体、住宅産業研修財団(東京)が国土交通省の補助を受け「大工育成塾」を開校した。背景には一戸建て需要の減少で、工務店などで若者を一から育てられない事などがある。入塾した一期生は東京、大阪、福岡で計52人。顔ぶれは大卒者や元フリーターなど様々である。しかし体験重視で独特の上下関係が残る大工の世界を息苦しく感じる若者もおり、一期生は三年間で半分に減った。入塾後は自宅近くの工務店に弟子入りし、人格形成のためとして週末には元警察官による、礼儀作法講座など座学も受ける。大工育成塾一期生の佐々木栄治さん(23)は、塾の紹介で棟梁の常山泰弘さん(53)のもとに弟子入りして三年がたつ。高校卒業後一年半アルバイト生活を送り、進路に悩んでいたころに、両親が塾生募集の記事を見つけた。興味を持ちすぐに受験。入塾当初は困惑の連続で、何度も辞めようと思ったが、ここで逃げたら他でもだめだと歯を食いしばったという。自信がついたのは昨年の夏。大工で身を立てる決心をした。卒業後は別の工務店に勤めながら、夜間の大学で建築を学ぶつもりだと話す。千葉県東金市で働く須藤裕輔さん(25)は、建築を取り巻く環境を自分なりに変えたいという思いを持ち、設計ができ、木の性質を理解した家を建てられるような大工になりたいと話す。